担癌患者のコロナ感染リスクは一般集団と同等

SARS-CoV-2 Testing in Patients With Cancer Treated at a Tertiary Care Hospital During the COVID-19 Pandemic.

Berghoff AS et al.
J Clin Oncol.2020 Oct 20;38(30):3547-3554.
PMID:32795227

Abs of abs.
施設および政府による安全基準導入された後の入院癌患者におけるSARS-CoV-2の有病率を調べた。2020年3月21日から5月4日までの間に、鼻腔からのSARS-CoV-2 PCR検査を受けた癌患者を対象として調査した。この癌コホート集団の結果は、オーストリアでの無作為抽出集団(対照コホート1)および当院に来院した非癌患者のコホート集団(対照コホート2)の有病率と比較した。連続した癌患者1016例に対し計1688例のSARS-CoV-2検査が行われた。患者 1016例中270例(26.6%)でネオアジュバント/アジュバントの抗癌剤治療が行われており、560例(55.1%)が緩和治療を受けていた。1016人中53人(5.2%)の患者がCOVID-19に関連する可能性のある症状を自己申告した。1016人中4人(0.4%)にSARS-CoV-2が検出された。当施設での検査時点では、SARS-CoV-2陽性患者4人の全員が無症状であり、うち2人は症候性COVID-19から回復した患者であった。ウイルス排除期間は、4例中3例で陽性判明後14~56日後であった。癌コホートと対照コホート1の間のSARS-CoV-2有病率の推定オッズ比は1.013[0.209~4.272];P=1であり、対照コホート2とがんコホートの間の推定オッズ比は18.333[6.056~74.157]であった。今回の結果から、人口全体および施設の安全対策を厳密に行った上で、現在のCOVID-19流行下においても、大規模医療機関における積極的な抗がん剤治療継続とフォローアップがなお可能であることが示された。無症状キャリアを検出し拡散を避けるために、癌患者に対するSARS-CoV-2検査を定期的に実施することが提言される。

感想
Covid-19に関する知見が蓄積されつつあります。肺癌はがんセンター以外の病院では呼吸器内科が担当することが多く、そこでは市中肺炎も見ている場合がほとんどだと思います。過去に肺炎の横のベッドに抗がん剤で骨髄抑制の人が寝ているという光景も、決して珍しくありませんでした。今でも待合室で無症候のSARS-CoV-2保持者が隣に座っていることは十分に想定されます。入院前に一律にPCRを行うことも現在ではやむを得ないことになっています。本研究の主題は、「一般集団に比較して癌患者はSARS-CoV-2に感染しやすいのか」です。これまでは癌患者をスクリーニングしたらとか、陽性患者の中で癌患者の割合がという報告がなされてきました。今回の結果は、癌患者で0.4%、同時期の人口全体が0.4%でオッズ比が1.013[0.209~4.272];P=1で、リスク増加は認めらませんでした。もちろん一般集団と癌集団では年齢構成が異なるため調整されています。繰り返しますが、今回の化学療法中も含めた癌患者の感染リスクは一般集団と同じであるという情報は大切です。コロナ騒動も間もなく1年になろうとしていますが、消滅することなく継続しています。このコロナに対し、スタッフのやりくりを含めた体制は臨時のものをずっと延長して使っており、そろそろ恒久的なものを考えねばならない時期に来ていると感じます。