術前治療としての免疫チェックポイント阻害薬の効果

Neoadjuvant PD-1 Blockade in Resectable Lung Cancer.

Forde PM et al
N Engl J Med. 2018 Apr 16. [Epub ahead of print]
PMID: 29658848

Abs of abs.
抗PD-1抗体は、進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者の生存率を改善したが、切除可能な非小細胞肺癌には試されていない。この分野は最近10年での進歩が乏しい。本試験では、未治療の外科的切除可能な早期(stageI、IIまたはIIIA)のNSCLCを有する成人を対象に、ニボルマブ(3mg/kg)を2週間毎に2回静脈内投与し、最初の投与から約4週間後に手術を計画した。プライマリーエンドポイントは、安全性と実施可能性であった。さらに腫瘍の病理組織上の反応、PD-Lの発現、mutation burden、ネオ抗原特異的T細胞応答も評価した。術前療法としてのニボルマブは毒性は許容でき、手術遅延との関連は見出されなかった。切除された21個の腫瘍のうち、20個が完全切除であった。大きな病理学的反応は、45%に見られおり、PD-L1陽性およびPD-L1陰性の両方で起こっていた。病理学的反応とmutation burdenとの間には有意な相関があった。評価可能であった9人の患者のうち8人において、PD-1阻害薬投与後の状態で、腫瘍および末梢血の両方のT細胞クローン数が増加していた。病理学的に完全奏効を示した腫瘍において、mutation関連のネオ抗原特異的T細胞クローンは、治療後2-4週間で末梢血中で急速に増殖を示し、しかもこれらのクローンのいくつかは、ニボルマブの投与前には検出されていなかった。術前化学療法としてのニボルマブは有害事象がほとんどなく、手術を遅らせず、45%において大きな病理学的反応が見られた。腫瘍のmutation burdenは、PD-1阻害に対する病理学的反応を予測するものであった。また治療は、末梢血におけるmutation関連ネオ抗原特異的T細胞クローンの拡大を誘導していた。

感想
症例数は少ないですが、多角的に検討され今後の方向性を示す研究です。免疫チェックポイント阻害薬の治療によって腫瘍はどう変化しているか?まず形態学的には、腫瘍がリンパ球浸潤とマクロファージを伴った線維化に置き換わっています。また病理学的に反応している腫瘍では、腫瘍特異的T細胞クローンが治療後の腫瘍内、末梢血中ともに増加していました。少サンプルではありますが、これらのクローンはニボルマブ前には同定できないものでした。つまりニボルマブによってこれらのクローンが誘導されるかどうかが効果のカギとなっている可能性があります。その他FoxP3+ regulatory T細胞、 CD8+T細胞などの変化は、Fig2で見ることができます。また従来通りmutation burdenの多い方が、縮小しやすいものの免疫関連遺伝子異常との関連は見られず、JAK1、JAK2の不活性化にかかわる変異の有無とも関係が見られませんでした。今回は切除可能な集団が対象ですので、周術期含めその後の経過が気になります。手術に伴う合併症はなさそうでした。経過ですが、今回は2回目のニボルマブ投与から中央値で18日後に手術が施行され、12ヶ月のフォローアップがなされており16/20(80%)が無再発です。1人が事故死、3人が再発しています。その内訳も詳しく書かれています。一人は脳転移再発で定位照射を行い生存中、一人はリンパ節再発し抗がん剤+放射線治療追加し生存中、最後の一人は術後1年で遠隔転移し死亡しています。これらの成績が良いかどうかは即断できません。今後、術前治療が標準になるかどうかは未知ですが、進行例に関しては確実に幅が広がっています。