術後補助化学療法としてのゲフィチニブ

Randomized Phase III Study of Gefitinib Versus Cisplatin Plus Vinorelbine for Patients With Resected Stage II-IIIA Non-Small-Cell Lung Cancer With EGFR Mutation (IMPACT).

Tada H et al.
J Clin Oncol. 2021 Nov 2.
PMID:34726958.

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者に対する術後補助化学療法としてのゲフィチニブの有効性を検討した。IMPACT試験(WJOG6410L)は、無作為非盲検第Ⅲ相試験で、2011年9月から2015年12月までにEGFR遺伝子変異陽性(Ex19欠失またはL858R)、PⅡからⅢ期非小細胞肺癌完全切除例を対象として行われた。ゲフィチニブ(250mg/日)を24ヶ月間投与する群と、シスプラチン(80mg/m2)+ビノレルビン(25mg/m2)を3週間に1回4サイクル投与する群(cis/vin)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は無増悪生存期間(DFS)であった。234名の患者が割り付けられ、うち232名(各116名、同意を取り下げた2名を除く)のDFS中央値は、ゲフィチニブ群とcis/vin群で35.9ヶ月と25.1ヶ月であった。しかしKaplan-Meier曲線は術後4年前後で交差し、統計学的有意差は見られなかった(P=0.63、ハザード比0.92[0.67-1.28])。生存率(OS)も差がなく(P=0.89、ハザード比1.03[0.65~1.6])、5年生存率はゲフィチニブ群、cis/vin群でそれぞれ78.0%、74.6%であった。治療関連死は、ゲフィチニブ群とcis/vin群でそれぞれ0人と3人であった。今回の試験で術後補助化学療法としてのゲフィチニブは早期再発を予防すると想定したが、DFSとOSの延長は見られなかった。しかしながらDFSとOSが同じことから、特定の集団、特にプラチナ2剤不適格と思われる患者については、ゲフィチニブが正当化される可能性がある。しかし本試験は非劣性試験ではないことに注意が必要である。

感想
国内で行われた試験です。10年前から始まり西日本中心に行われました。結果はnegative trialであり残念ながら術後標準治療を変えることはできませんでした。すでに報告されているADAURA試験で、術後オシメルチニブの高い効果が示されているので仮にpositiveであったとしても議論が混乱しただけかもしれません。要旨以外の重要な点は、5年DFSがゲフィチニブ群で31.8%、ケモ群で34.1%でほとんど差がみられなかったことが挙げられます。Ⅱ/Ⅲ期、さらにEGFR遺伝子変異陽性ですから再発の割合はかなり高いように思われますが、1/3は完治扱いになるのは意外に高く感じます。また初再発部位が中枢神経系の症例がゲフィチニブ群30%、ケモ群18%とゲフィチニブ群が中枢神経系の移行が悪いとは言え違和感を覚えます。中枢神経系以外によく効くためではないかとの考察ですが、そうであればDFSが開くはずで偶然の要素が大きいと思います。生存曲線はDFSは交差し、OSは重なっている印象です。このような場合サブグループ解析もどこで切っても大差はないことが多いのですが、今回の場合高齢者(70歳以上)で大きく開く傾向にありました。探索的解析になるので、普通ディスヶッションの最後の方に書かれるだけですが、要旨の結論も書かれてあることから本研究で重要な点と認められたのでしょう。確かにシスプラチンに適さない術後患者でこの選択肢があれば有難いと思います。