アファチニブ導入を低用量から行っても遜色ない効果

A prospective, phase II trial of monotherapy with low-dose afatinib for patients with EGFR, mutation-positive, non-small cell lung cancer: Thoracic oncology research group 1632.

Noro R et al
Lung Cancer. 2021 Nov;161:49-54.
PMID:34536731.

Abs of abs.
アファチニブは、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する有効な治療である。しかし、毒性のため頻回に減量が必要となる。今回の研究目的は、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者における低用量アファチニブ単剤療法の有効性、安全性および血中濃度を評価することにある。未治療進行EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者を対象とした多施設、単アーム、非盲検、第Ⅱ相試験であった。2017年から2018年にかけて、日本の21施設から53名の患者が登録された。患者は当初、アファチニブ20mg/日を経口投与された。SDの状態で進行した場合、増量(10mg)が可能とした。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。PFS中央値は、閾値9.2ヵ月、期待13.8ヵ月として設定した。さらに、低用量アファチニブの血中濃度と転帰および有害事象との相関関係を評価した。患者の年齢中央値は70歳(37~85歳)で、28人(52.8%)が女性であった。観察期間中央値は20.8ヵ月であった。PFS中央値は12.6ヵ月[9.7~14.3]、全生存期間は未達であった。これで主要評価項目は達成した。奏効率は66.0%(51.7-78.5)、病勢制御率は92.5%[81.8-97.9]であった。グレード3以上の有害事象は12名(22.6%)に発生し、下痢は4名(7.5%)であった。この事象の発生率はアファチニブ40mgを用いた過去の第Ⅲ相試験よりも低かった。今回の結果から得られた低用量アファチニブの有望な効果と忍容性に基づき、この治療法はEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の標準治療の一つとなるべきである。

感想
臨床的に非常に使える研究です。先行類似研究[Yokoyama T LungCancer2019 PMID:31446992]に血中濃度の検討も加えられ、より強固な結論と受け取れます。下痢を初めとした毒性のためにアファチニブの使用頻度は施設間格差が大きいように思います。オシメルチニブ全盛の今となってはあまりクローズアップされなくなっていますが、私は本来アファチニブを初回治療に使いたいと思っています。何が良いのかというと、肺臓炎の少なさと何らかの効果は必ず得られる点を評価しています。オシメルチニブの肺臓炎の頻度が高く、また心臓のスクリーニングも欠かせません。確かに有害事象が少なく継続できる人も多いですが、一方で短期で飲めなくなる人もいます。アファチニブはオシメルチニブほどでないにしろ、ゲフィチニブ、エルロチニブよりは確実にPFSが長く安定して使えます。下痢と爪囲炎についても20㎎まで落とせばかなりコントロールできます。ただ実地で40㎎を飲み続けられる人はまずいません。最終的に30㎎もしくは20㎎、高齢者ですと20㎎隔日まで減量が必要となります。今回の研究では漸増させる使い方でも同等の効果が得られるという点で、高齢者などで特に有益な情報となるのではないでしょうか。