術後補助化学療法の維持療法;IMpower010

Adjuvant atezolizumab after adjuvant chemotherapy in resected stage IB-IIIA non-small-cell lung cancer (IMpower010): a randomised, multicentre, open-label, phase 3 trial.

Felip E et al.
Lancet. 2021 Oct 9;398(10308):1344-1357.
PMID:34555333.

Abs of abs.
比較的早期の非小細胞肺癌の完全切除後の予後改善を目指し、新たな術後補助化学療法が必要である。今回はこれらの患者にプラチナ製剤による術後補助化学療法を行った後にアテゾリズマブ投与することとBSCとを比較した。IMpower010は、国際共同無作為、非盲検の第Ⅲ相試験である。対象はIB期(径4cm以上)-ⅢA期の完全切除例とした。プラチナベースの術後補助化学療法(1-4サイクル)後に、アテゾリズマブ(1200mg、21日毎、16サイクルまたは1年間)か経過観察に1対1で割り付けた。主要評価項目は主治医による無再発生存期間である。これをPD-L1=1%以上(SP263)のⅡ-ⅢA期のサブグループについてまず行い、次にⅡ-ⅢA期の全患者、最後にIB-ⅢA期のITT集団と段階的に検証した。安全性は割り付けられたすべての患者で評価した。2015年10月7日から2018年9月19日の間に、完全切除された1280人が登録された。うち1269人が術後補助化学療法を受け、そこから1005人がアテゾリズマブ(n=507)またはBSC(n=498)へのランダム化に適格とされ、各群495人が治療を受けた。Ⅱ-ⅢA期における追跡期間中央値32.2ヶ月の後、PD-L1=1%以上のⅡ-ⅢA期(ハザード比0.66[0.50-0.88]; p=0.0039)および全Ⅱ-ⅢA期(ハザード比0.79[0-64-0-96]; p=0.020)でアテゾリズマブがBSCよりも無再発生存が改善していた。ITT集団において、無再発生存のハザード比は0.81[0.67-0.99];p=0.040)であった。アテゾリズマブ関連のグレード3/4の有害事象は495例中53例(11%)に見られ、グレード5は4例(1%)に見られた。
IMpower010では、完全切除されたⅡ-ⅢA期の非小細胞肺癌において、術後補助化学療法後のアテゾリズマブ投与がBSCよりも無再発生存の改善が見られ、特にPD-L1=1%以上で効果が認められ、安全性に関する追加情報はなかった。術後補助化学療法後のアテゾリズマブは、切除された早期の非小細胞肺癌に対して有望な治療選択肢となり得る。

感想
全体的にはPD-L1にかかわらず組み入れられていますが、プライマリーエンドポイントはPD-L=1%以上のⅡ-ⅢA期のDFSです。まずこれをα0.05で検定、それがpositiveならⅡ-ⅢA期全体のDFS→さらにITT集団でも検定…とアルファが0.05まで消費していく形で設定されています。結局PD-L=1%以上のⅡ-ⅢA期のDFSについて(p=0.0039)と、全Ⅱ-ⅢA期(p=0.020)までが証明され、ⅠB -ⅢA期全体(ITT集団)についてはp=0.040(有意水準は0.05-0.0039-0.020=0.0261)で”boundary for statistical significance”と述べられています。OSについては未成熟で結論は出ませんが、補遺を見るとPD-L=1%以上のⅡ-ⅢA期で少し開きそうです(ハザード比0.77[0.51-1.17])。
今回は術後補助化学療法を型どおり行ったあとなので「補助化学療法の維持療法」になるわけですが、どのレジメンで化学療法するかで差があるのかも面白いところです。あくまでサブグループですが、シスプラチン+ゲムシタビンが悪くて、シスプラチン+ビノレルビンが相変わらず良い結果でした。またEGFR遺伝子変異陽性でもアテゾリズマブの効果は維持され、ALK陽性では差が見られないところも興味深いところです。PD-L1=50%以上が良いのは予想通りですが、現喫煙者と非喫煙者で差がなく、既喫煙者で効果が高いのは理解に苦しみます。この辺りはサブグループであり偶然の要素も紛れ込むので何とも言えません。今後は術前術後に免疫療法が入ってくるのは確実ですので、肺癌の抗がん剤治療に携わる人は仕事が増えることを覚悟しておくべきでしょう。