高すぎる?論文購読料、学会参加費も年々高騰

今回は論文ではありません。完全な私見です。
5月9日付朝日新聞22面の記事「高騰する論文購読料 ドイツでは大学が出版社と対立」を読みました。ここでは大学と出版社との契約について記述されています。要は大学図書館が論文誌の購読に支払った金額がここ10年で2倍以上になっているが、予算は増えず苦境に陥っているという内容です。私も論文購読の費用が高くなってきたことを感じています。そのため最近、Sci-Hubといった有料論文を無料公開する海賊版サイトが問題となり、出版社との訴訟になっています。私自身は大学に所属していないため、学会入会でカバーされる論文アクセス、それ以外は独自で購読、あるいは個別購入していますが、かなり高額になります。施設として入手する手段はありますが、論文は読みたい瞬間に読むべきで、数日後でも意欲は大幅に減退します。そのため自費購入しています。安いものでNEJMがオンラインのみで25596円、その他では2-4万円のことが多く、1論文だけ買うとなると35ドル程度が必要です。ある程度の疾患概念を知るだけでしたら、オープンアクセス誌の総説を複数読み比べれば、ほぼ事足りますが、論文執筆となるとアブストラクトだけではなく中の図表まで参照する必要があり、どうしても購入する必要が生じます。これらの論文購読料は施設としてのみならず個人購読料としても年々上がっています。
前述のSci-Hubについては、「論文海賊サイトSci-Hubを巡る動向と日本における利用実態」として詳細が報告されています。この海賊版サイトから全世界から一日あたり35万件以上ダウンロードされ、日本では2017年に12万件ダウンロードされたとのことです。ただこれにはオープンアクセス誌も2割程度含まれており、費用だけの問題でなくポータルサイトのような使われ方が伺えること、また8割の使用者は1回だけ使用していること、など興味深いデータが記述されています。なおこの論文自体はオープンアクセスです。有料の主要誌では、査読がきちんと入っていることで、質の保証と、極端な主張が排除されているため安心できることは確かです。値段の価値は十分あると思いますが、量が多くなってくると個人には大きな負担です。多種多様なものを取り揃えなくてはならない大学図書館にはあきらめるところも出てくるでしょう。
一方で査読をほとんどしないでアクセプトし、電子ジャーナル上に掲載する、いわゆるハゲタカジャーナルも増えています。論文を無条件で掲載し、高額の掲載料(数万~数十万)を取るもので、背景には英文業績を焦る研究室の存在があります。さて皆さまご存知の通り、論文を書くとメールアドレスが公表されてしまいます。このメールアドレスは自動収集され売買されているようです。したがって論文を書くと、これらのジャーナルと思われる投稿勧誘のメールが毎日大量に送られてくることになります。仮に、これらのハゲタカジャーナルに一度掲載されてしまうと、支払い能力があると認識され、勧誘メールはますます増えるものと考えられます。多少の掲載料は仕方のないところですが、なるべく掲載料が少ないところへの投稿を心がけたいものです。
最近では学会参加費も高騰しています。10年前は国内学会は1万円が標準であったと記憶していますが、今回の呼吸器学会総会は17000円でした。これが高いかどうかは比較の問題です。海外学会例えばアメリカ臨床腫瘍学会は$780.00ですし、これら国際学会と比べれば国内学会はまだまだ安いとも言えます。要は学会もジャーナルも「値段に見合う価値があるか」ということです。私は優れた論文は35ドル払っても読む価値があると思っています。貧乏性なので、自腹を切れば完全消化せねば損という気持ちも強くなります。前述の海賊版サイトの利用は論外ですが、情報過多の時代ですので、よく考えて学会参加、雑誌は購読するようにしないと、コストのみならず時間の浪費となります。