オリゴメタへの局所療法の追加は予後を改善する

Local Consolidative Therapy Vs. Maintenance Therapy or Observation for Patients With Oligometastatic Non-Small-Cell Lung Cancer: Long-Term Results of a Multi-Institutional, Phase II, Randomized Study.

Gomez DR et al.
J Clin Oncol. 2019 May 8:[Epub ahead of print]
PMID:31067138

Abs of abs.
以前に発表した研究では、転移数の少ない非小細胞肺癌で初回抗がん剤後に進行が見られなかった患者に対して、放射線療法または手術を使用した局所療法(LCT)が無増悪生存期間(PFS)を延長し、新規病変の出現を遅らせることを報告した。今回は、追加の副次的評価項目と全生存期間(OS)の結果を示す。多施設共同無作為化第II相試験として、IV期非小細胞肺癌、3か所以下の転移、および初回化学療法後3ヶ月以上経過しても進行が認められない患者が登録された。治療として残存部位へのLCTを行う群と、維持療法/経過観察(MT/O)へ1:1で割り付けた。主要評価項目はPFSであり、副次的評価項目は、全生存期間、毒性、新規病変の出現とした。解析は両側検定でP<0.10を有意と判断した。効果安全委員会は、49人の患者が割り付けられた時点で、LCT群におけるPFSの有意な利益が見られるとして試験の早期終了を推奨した。追跡期間中央値38.8ヶ月[28.3-61.4]のデータで、PFSの利益は持続していた(LCT群14.2ヶ月[7.4-23.1]、MT/O群4.4ヶ月[2.2-8.3]; P=0.022)。また、LCT群ではOSの利益も観察され(LCT群41.2ヶ月[18.9-NR])、MT/O群17.0ヶ月[10.1-39.8];P=0.017)、またグレード3以上の毒性の上乗せは見られなかった。疾患進行後の生存期間はLCT群で長く(LCT群37.6ヶ月、MT/O群9.4ヶ月;P=0.034)。MT/O群では20人の患者のうち、9人が進行後にすべての病変に対してLCTを受けており、OS中央値は17ヶ月[7.8-NR]であった(個人的な注意;文脈からこれはMT/O群で進行後局所治療を受けた9人のMSTを指していると思われますが、本文中には記載がなく確認できません)。今回の結果から、初回化学療法後に進行が見られなかった転移数の少ない非小細胞肺癌患者では、局所療法により維持療法/経過観察と比較してPFSおよびOSを延長した。

感想
初回の抗がん剤治療として、プラチナベース4サイクル、EGFR変異陽性では既存のTKIを3ヶ月以上、ALK陽性ではクリゾチニブを3ヶ月以上しているオリゴメタの症例が登録されています。局所療法の場合PFSは評価しにくいと思われます(理由は後述)。したがって全生存期間で評価する必要がありますが、LCT群の全生存期間中央値が41.2ヶ月と見事な結果でした。Fig2には両群の病勢進行後のOSも示されており、明らかにLCT群の方が勝っており長期の利益があることが示唆されます。個人的な意見としては、非常に粗い計算ですが、41.2ヶ月(全生存期間)<14.2ヶ月(PFS)+37.6ヶ月(PD後のOS)となっており、オリゴメタに局所治療を加えた場合のPFSは過大評価される傾向にあると思います。ちなみに一方のMT/O群は17.0>4.4+9.4となっており、計算値は近くなっています。さてLCTに利益がある理由として、転移進行の元となる腫瘍細胞が少なくなること、初回抗がん剤の効果を増強すること、残存腫瘍量による転移促進要因が弱くなることが挙げられています。また疾患進行後もLCTでは長いOSが観察されました。病勢進行後も追加のLCTを行えた群には生命予後改善が見られています。ただこれらの局所治療の追加を受けられた人は41%でありバイアスがかかっています。今回の結果から早期のLCTがよりbetterだが、それが無理なら病勢進行時にLCTを行うことができれば、それも生命予後改善に寄与すると考えることができるでしょう。
しかし現在はこの試験が始められたころと状況が一変しています。具体的に免疫療法+化学療法の場合、オリゴメタの扱いはどうすべきでしょうか。サイズが小さければ免疫治療によりコントロールを期待するという考え方もできますし、アブスコパル効果も期待して局所の放射線治療を積極的に追加するという考え方もあります。著者も問題点を認識しており、この試験が始まったのが2012年(免疫療法が本格的に入ってくる前)であるため、現在の状況でのLCTの有用性は再確認する必要があると述べています。しばらくLCTはケースバイケースで考えていくべきでしょうが、各癌種でこれが進むとコスト以外に放射線治療のリソースの問題も出てきそうです。