Ⅲ期化学放射線治療後のオシメルチニブ地固めの後ろ向きデータ

Consolidation Osimertinib Versus Durvalumab Versus Observation After Concurrent Chemoradiation in Unresectable EGFR-Mutant NSCLC: A Multicenter Retrospective Cohort Study.

Nassar AH et al.
J Thorac Oncol.2024 Jan 24 Epub ahead of print.
PMID:38278303.

Abs of abs,
デュルバルマブは、Ⅲ期非小細胞肺癌の化学放射線療法後の地固め療法で生存期間を延長する。EGFR遺伝子変異陽性患者に対する最適な地固め療法はまだ不明である。今回は24施設の多施設後ろ向き解析で2015年から2022年に、CRT後にオシメルチニブ、デュルバルマブ、経過観察を受けたⅢ期EGFR遺伝子変異陽性患者を解析し、実臨床での無増悪生存期間(rwPFS、主要評価項目)と全生存期間(副次評価項目)を評価した。根治的CRT治療を受けたⅢ期患者136人のうち、56人がデュルバルマブの地固め療法を受け、33人がオシメルチニブの地固め療法を受け、47人が経過観察をされた。背景は3つのコホートで同様であった。全コホートの追跡期間中央値は46ヵ月で、治療期間中央値はオシメルチニブで未達、デュルバルマブで5.5ヵ月(2.4-10.8)であった。サイズ、ⅢA/B/C期、年齢で調整した後、オシメルチニブ地固め療法を受けた患者は、デュルバルマブ療法または経過観察コホートと比較して、24ヵ月rwPFS率が有意に長かった(オシメルチニブ:86%、デュルバルマブ:30%、経過観察:27%、相互比較p<0.001)。デュルバルマブ群と観察群間でrwPFSに差はなかった。観察期間が限られるが、3つのコホート間で全生存期間に有意差は認められなかった。全グレードの有害事象は、オシメルチニブおよびデュルバルマブによる治療を受けた患者のそれぞれ52%(グレード3以上が2例[6.1%])および48%(グレード3以上が10例[18%])に発現した。デュルバルマブ地固め療法で進行した45人の患者のうち、37人(82%)にEGFR-TKIが投与された。このうち14人(38%)に有害事象が観察され、肺臓炎5人(14%;グレード≧3が2人[5.4%])、下痢5人(14%;グレード3以上が1人[2.7%])であった。本試験から、EGFR遺伝子変異陽性Ⅲ期患者に対するオシメルチニブ地固め療法は、デュルバルマブまたは経過観察と比較してrwPFSの有意な延長に関連することを示唆する。オシメルチニブの地固め療法での新たな危険性はなかった。

感想
現在のCRT後の標準治療であるデュルバルマブ1年間が、EGFR遺伝子変異陽性に対して最適か?という疑問は常にあります。過去記事、PACIFIC試験のサブ解析では何とも言えず、かといってCRT前に全例ドライバー変異が確認必須ともなっていないので、情報に乏しいままデュルバルマブ1年間投与になるのが現状です。ADAURAの強力な結果を見ると、地固めとしてデュルバルマブよりオシメルチニブが良いのではという発想は誰にでも浮かびます。先に言っておくとこの疑問に答える第Ⅲ相試験(LAURA)はASCOのプレナリー(現地時間6/2)発表予定です。結果が良いことはすでに報じられており、この記事が投稿されて半日程度で詳細がわかるので確認したいと思っています。
さて今回の結果ですが、PFS(Fig2)は圧倒的にオシメルチニブがよく見えます。背景に偏りがあることは承知の上で素直に眺めるとデュルバルマブでも若干の恩恵はありそうに見えます。OSについてもオシメルチニブが一番良さそうで、デュルバルマブも経過観察よりは良さそうに見えます。ここでデュルバルマブ→オシメルチニブの可能性を追求したくなります。結果的にそのようになっている37人について解析されています。TKIはオシメルチニブ33人、エルロチニブ3人、ゲフィチニブ1人で、14%に肺臓炎(うち1例G4)、同じ人数の下痢、大腸炎が確認されています。さらにゲフィチニブの1人を除外した36人を使い、デュルバルマブ終了から90日以内/以降のTKI投与開始で分けて見てみます。90日以内は36%に下痢または肺臓炎、90日以降は14%にそれが見られています。90日で分けるのが適切かどうかはわかりませんが、ICI直後のTKIはやはり危険が大きいようです。ちなみにLAURA試験はプラセボ対照なのでデュルバルマブの意義はわかりません。