結核・HBV陽性に対するICI治療

Immune checkpoint inhibition for non-small cell lung cancer in patients with pulmonary tuberculosis or Hepatitis B: Experience from a single Asian centre.

Chan GH et al.
Lung Cancer. 2020 Aug;146:145-153.
PMID:32540557.

Abs of abs.
近年、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は非小細胞肺がん(NSCLC)治療に優先して使われ重要性が高まっている。結核(TB)やB型肝炎(HBV)などの感染症がある場合、通常の臨床試験から除外されており、ICIの安全性と有効性については不明な点が多い。今回はアジアの単一施設で2014年1月から2019年6月までにICI治療を受けた進行NSCLC患者で、HBVおよび/または結核の既往歴のある患者を選択した。それらを全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、奏効率および安全性について対照群と比較した。191人の患者がICIを受け、47人(24.6%)に結核/HBVの既往歴があった。結核/HBVの既往歴のある患者のPFS中央値は5.7ヵ月[3.9-7.6]、対照群では3.1ヵ月[2.4-3.8]であった(ハザード比0.61、[0.39-0.93]、p=0.021)。OS中央値は15.6ヵ月[10.2-21.0]であったのに対し、対照群では11.1ヵ月[7.6-14.7]であった(ハザード比0.58[0.34-0.99]、p=0.046)。全グレードの有害事象も両群で同様であった。TB/HBV患者ではG3以上の有害事象がわずかに多かった。4人がICI開始後に結核を発症したが、結核の既往歴のある患者で再活性化を経験した患者はいなかった。HBV既往歴のある42人中、8人が不活性の慢性HBV感染を有し、6人が検出可能なウイルス量であった。以前にHBV暴露歴のあるものは34人いたが、再活性化は見られなかった。本研究から結核/HBV感染症患者において、ICIの使用は安全かつ有効であるように思われる。このような患者に対してのケアを最適化するためには、リスクを特定するための前向き研究が必要である。

感想
既往も含め結核患者は12人、うち4人はICI開始後に結核発症ですが、画像では疑わしい陰影があったとのことです。悪性腫瘍患者は、免疫抑制によって非典型的な陰影を作ることもあり注意が必要です。日本では気管支鏡検査時に結核菌も合わせて調べることが多く、抗がん剤が始まってから培養陽性が判明するケースもあります。本文ではICIの開始前に潜在性結核をスクリーニングすることを検討するように書かれていますが、日本ではどうするかまだ定まっていません。保険適用の問題は別にしても、QFTやT-SPOTなどでスクリーニングすると高齢者ではあてにならない可能性があります。結局画像をよく見て、治療中でも喀痰検査を繰り返し行っていくことしかないような気がします。
一方HBVについては16人の患者に肝酵素上昇が見られ、グレード3が3人に見られたとのことです。恐ろしい再活性化、劇症化は見られなかったようで、リスクが高い症例でも抗ウイルス薬を飲みながら安全に投与できるようです。気になるのは結核/HBV群でPFS、OSが良かったことですが、これは背景因子の違いと説明されています。男性が89.4%対68.1%、喫煙者が78.7%対53.5%、PD-L1>=1%が51.1%対41.7%また初回治療も53.2%対38.2%とICI効果の良い因子が偏っていたようです。結局今回学べることは結核、HBVがあっても普通にICI治療して良いことであり、特に予後には関係がなさそうと言うことになります。