エルロチニブ+ラムシルマブ、EGFR遺伝子変異別のサブグループ解析

RELAY Subgroup Analyses by EGFR Ex19del and Ex21L858R Mutations for Ramucirumab Plus Erlotinib in Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer.

Nakagawa K et al.
Clin Cancer Res. 2021 Jul 22.
PMID:34301751.

Abs of abs,
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌において、変異型によってEGFR-TKIの成績は異なってきた。特にL858Rは19delと比較して有益性が低いことが報告されてきた。今回は第Ⅲ相RELAY試験において、EGFR遺伝子変異型の違いが治療に与える影響を調べた。また、EGFR変異型の違いと、治療前に存在している併存遺伝子変異、治療により誘発される遺伝子変異との関連も検討した。RELAYは転移性非小細胞肺癌、EGFR遺伝子変異陽性で19delまたはL858Rであるもの、中枢神経系転移のないもの登録し、エルロチニブ(150mg/日)+ラムシルマブ(10mg/kg;RAM+ERL)またはプラセボ(PBO+ERL)にランダムに割り付けた臨床試験である。主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)とし、副次項目として、奏功率(ORR)、奏功期間(DOR)、PFS2、化学療法実施までの期間(TTCT)、安全性、次世代シークエンス解析とした。19delとL858Rの比較では臨床的特徴および共存変異プロファイルはよく似ていた。19delの1年PFS率はRAM+ERLで74%、PBO+ERLで54%、L858RではRAM+ERLで70%、PBO+ERLで47%であった。19delとL858Rにおいて、RAM+ERLで同様の治療効果(ORR、DOR、PFS2、TTCT)が確認された。ベースラインのTP53変異は、19delとL858Rの両方において、RAM+ERLの優れた転帰と関連していた。病勢進行時のT790M変異率は、治療群間および変異型によらず同程度であった。RAM+ERLは19delおよびL858Rのどちらでも有意な利益があり、両方のEGFR変異型で有用であることが示唆された。

感想
本家のRELAY試験[Nakagawa K Lancet Oncol2019 PMID:31591063]の主な結果は、初回治療でのRAM+ERLのPFSが19.4 vs. 12.4ヶ月、ハザード比0.59というものでした。今回は19DelとL858R別の解析と、主にTP53変異があることによって治療効果が異なるということが主題です。 症例数が449例、脳転移が比較的多いEGFR遺伝子変異陽性例で、脳転移のないものを集めたという意味ではもともと予後が良い集団である可能性があります。血管新生阻害薬の投与がある以上仕方のないことですが、FLAURAなど他の臨床試験とPFS中央値の横比べは要注意です。またERL+ベバシズマブの試験でもPFSが差が出てもOSが差が出ないことが確認されており、このレジメンが生命予後の改善につながるかどうか、もう少し見守る必要があります。ただ脳転移を含むERL+ベバシズマブでもPFSの延長が確認できたとする第Ⅲ相試験[Zhou Q CancerCell2021 PMID:34388377]も最近報告されています。TP53変異が並存する場合、これまでPFSの短縮が繰り返し報告されています。今回、TP53変異例におけるラムシルマブの上乗せは両変異とも確認され、野生型ではL858Rでより上乗せ効果が高く出ています。TP53野生型で19Delにおいて、mPFSが20.6 vs. 19.4ヶ月、L858Rにおいて20.8 VS. 13.8ヶ月となり、TP53野生型ではL858Rで利益がありそうとも解釈できます。しかし逆に19Delでは上乗せ効果がないとも言えます。またTP53は免染でなく遺伝子変異である点に注意が必要で、追加測定にはコストを考える必要があります。保険適用の問題もあり、このレジメンの使いどころはなかなか難しいところですが、個人的にはTP53 statusの分かった患者での使用例を増やして考えていく必要があるのではないかと思います。