High ratio of T790M to EGFR activating mutations correlate with the osimertinib response in non-small-cell lung cancer.
Ariyasu R
Lung Cancer. 2018 Mar;117:1-6.
PMID: 29496249
Abs of abs.
オシメルチニブは、Thr790Met(T790M)変異耐性を克服する第3世代のEGFR-TKIである。しかしながら、オシメルチニブは、患者によってはわずかな有効性にとどまることがある。今回はEGFR遺伝子変異・T790Mの比率と、オシメルチニブに対する反応との相関を調べた。2016年4月から2017年4月までの間に、44名の患者がオシメルチニブ治療を開始した。Droplet digital PCRを用いて33人の患者からの細胞検体からのEGFR変異分析を行った。これによりEGFR遺伝子変異に対するT790Mの比率を計算し、オシメルチニブへの反応との相関を見た33人の腫瘍から得たT790MとEGFR遺伝子変異との比率は平均0.420であった。そのうち21人はT790M比が0.4以上であった。T790M比が0.4以上の患者では、0.4未満と比べオシメルチニブの奏効率が有意に高かった(92.3% vs. 52.6%;p=0.0237)。T790M比と腫瘍縮小率との相関を調べると、相関係数は0.417(p=0.0175)であった。T790M比が0.4以上の患者では、無増悪生存期間中央値が355日であり、T790Mが0.4未満(同中央値:264日)の患者よりも長かったが、有意ではなかった。T790M比が0.4以上の患者では、初回治療からの治療期間中央値は931日であり、T790M比が0.4未満(同中央値567.5日)より有意に長かった(p=0.044)。本研究から、腫瘍におけるEGFR遺伝子変異・T790M比は、オシメルチニブに対する反応と相関し、高いT790M比を有する患者は、長い治療歴があることが知られた。
感想
FLAURA試験の結果から、EGFR遺伝子変異陽性例に使われるTKIはオシメルチニブだけになると思われます。これまで第1,2世代のTKIが効かなくなった後にT790M陽性例のオシメルチニブを使って来ましたが、今後少数になってしまうと思われます。この薬のTKI既治療例での反応には差がある印象で、中には全く効果が出ない人もいます。この現象は腫瘍の不均一性で説明されています。今回はT790M変異/従来のactivaiting mutationの割合でオシメルチニブの効果を見た研究です。ここでT790Mの割合とオシメルチニブの効果(縮小効果)に正の相関関係があれば美しい話となります。相関係数は一般的に、絶対値にして0.4-0.7程度を正の相関、それ以上を強い相関と解釈します。今回の結果はFig2にあるとおりr=0.417と決して強い関係ではありません。オシメルチニブがDel19やL858Rに効果を残している可能性、あるいは別の耐性機序との複合していることも十分考えられ話はそう単純ではないようです。また細かい話ですがT790Mの割合として、まずT790M/野生型アレルとして割合を計算、次にactivating mutation/野生型アレルの割合を算出、その比をT790M比(のようなもの)として出しています。したがって野生型アレルの検出がばらつく場合、T790Mが計算上100%を超えたり、計算不能になったりすることがあります。このあたりは詳しくないのですが、おそらく直接比の検出は技術上難しいのでしょう。T790M比の平均値(0.4)で大きく2分割した比較も報告されています。T790M≧0.4では有意ではないもののPFSが長く、前治療がアファチニブの割合が比較的高く(15%対38%)なんらかの方向性を示している可能性もあります。しかし初回治療からの時間がT790M≧0.4では有意に長く(931日対567.5日)、単に経過がゆっくりであるからアファチニブを試す余裕があったのかも知れません。TKIの治療シークエンスには、既存のTKIメーカーが生き残りを目指して様々な仮説検証に取り掛かっているようです。今後このような検査が実地臨床に提供された場合、ある程度の効果予測を持ってオシメルチニブを使うことができる気もしますが、一方でそれが利益になっているかはやはり臨床試験でしか知ることができません。