Protection by a Fourth Dose of BNT162b2 against Omicron in Israel.
Bar-On YM et al.
N Engl J Med. 2022 May 5;386(18):1712-1720.
PMID:35381126
Abs of abs.
2022年1月2日からイスラエルでは60歳以上の人に4回目のBNT162b2ワクチン投与を開始した。4回目の接種とSARS-CoV-2感染、および重症化に対する効果を調査した。イスラエル保健省のデータベースを用いて、SARS-CoV-2 のオミクロン株が優勢であった期間(2022/1/10-3/2)に、60歳以上で4回目の接種対象となった1252331人のデータを抽出した.4回目投与後8日目以降(4回接種群)の確定感染率および重症化率を、3回のみの接種者(3回接種群)および3-7日前に4回目の接種を受けた者(中間対照群)とを比較し、時間関数として推定した.罹患率の推定には、年齢、暦日を調整した疑似ポアソン回帰を用いた.10万人日あたりの重症例の発生数(未調整率)は、4回投与群1.5、3回投与群3.9、中間対照群4.2であった。疑似ポアソン回帰では、4回目の投与を受けてから 4週目の重症化率は、3回投与群より3.5倍[2.7-4.6]低く、中間対照群より 2.3倍[1.7-3.3]低かった.4回目の接種後6週間は、重症化予防効果は低下していなかった.10万人日あたりの感染確定例(未調整)は、4回投与群では177例、3回投与群では361例、中間対照群では388例であった.疑似ポアソン回帰では、4回目の投与を受けてから4週目に感染確定率は、3回投与群の2.0倍[1.9-2.1]低く、中間対照群より1.8倍[1.7-1.9]低いことが確認された.しかしこの保護作用は後の週には弱くなった。SARS-CoV-2感染および重症化率は、BNT162b2ワクチン4回接種後の方が、3回接種後よりも低かった。感染確定例となることへの予防効果は短期間であり、またその期間での重症化予防効果は弱まらなかった。
感想
昨年(2021年)の5月は第4波で大変な状況でした。高流量の酸素を必要とする人が溢れかえり重症の搬送先がなく現場の実感としては医療崩壊を通り越して日本が終わるのではないかとすら感じました。ワクチン普及と抗体療法で感染者は出るものの現在は入院を必要とする人は激減しています。GWは行楽地への人出も戻りこのままコロナ以前へ戻るような気もしますが、まだ重症化例はあるため4回目のワクチン投与が考えられています。ワクチン後の副反応については発熱や倦怠感が強い場合が少なからず存在し、リスクと利益を考える時期に来ていると思います。今回の論文では率にすると3回目に比べて3.5倍のリスク軽減と言いますが、10万人日あたりの重症例は、4回投与群1.5、3回投与群3.9であり、元々かなり少ない発生をさらに少なくしたことになります。ワクチンにも有害事象あるいは超長期についてはわかっておらず、また自然獲得した免疫との差も気になるところです。このあたりに関して非常に良い論説“Covid-19 Boosters – Where from Here?”[Offit PA NEJM2022 PMID:35417633]が出されています。フリーで読めるので一読を勧めます。このなかでワクチンの目的は重症化、死亡を防ぐことであり、いわゆるゼロコロナ政策は間違っていることを述べています。また“original antigenic sin(抗原原罪)” :簡単にいえば最初に反応したパターンにしか対応できなくなることへの懸念もあります。現在のところ4回目の対象者は厚労省のHPには事務連絡として「3回目接種から5か月経過した60歳以上および基礎疾患や重症化の恐れのある人」としています。これに沿って今後案内されるでしょうが、コロナが下火になるにつれ難しい判断となりそうです。