Durvalumab as third-line or later treatment for advanced non-small-cell lung cancer (ATLANTIC): an open-label, single-arm, phase 2 study.
Garassino MC et al.
Lancet Oncol. 2018 Mar 12. [Epub ahead of print]
PMID: 29545095
Abs of abs.
免疫チェックポイント阻害薬は、EGFR遺伝子変異またはALK遺伝子異常を伴わない進行非小細胞肺癌(NSCLC)の患者に対する新しい標準治療であり、EGFR変異陽性またはALK変異陽性における利益は示されていない。今回はEGFR/ALK有無およびPD-L1発現によって非小細胞肺癌患者を3つのコホートに分け、デュルバルマブ治療の効果を評価した。ATLANTICはアジア、ヨーロッパ、北米の139施設で行われたオープンラベル単アームPhase2試験である。患者はプラチナベースの化学療法(適応がある場合のチロシンキナーゼ阻害剤)により、少なくとも2レジメン後に進行した非小細胞肺癌を持つ18歳以上が適格となった。PSは0または1で、RECIST1.1で評価・測定可能な病変が必須となっている。主な除外基準として小細胞肺癌の混在、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の投与歴、なんらかの免疫療法を受けている間にグレード3以上の免疫関連有害事象を起こしたことがあるものとした。コホート1は、EGFR+/ALK+で、PD-L1発現が25%以上、25%未満の患者が割り当てられた。 コホート2、3は、EGFR-/ALK-であり、コホート2ではPD-L1発現が少なくとも25%または25%未満の患者を含み、コホート3は、PD-L1発現90%以上の患者が割り当てられた。患者は、デュルバルマブ(10mg/kg)を2週毎に静注し12ヶ月まで投与された。一旦治療利益が認められ、12ヶ月を経過した後に再発した患者には再治療が認められた。プライマリーエンドポイントは、PD-L1発現が増強した患者(コホート1および2のでPD-L1=25%以上、コホート3では90%以上と定義)での奏効率で、これはRECIST1.1に従い独立した中央判定で評価された。安全性は、少なくとも1回のデュルバルマブの投与を受け投与後データを入手したすべての患者において評価された。試験は現在進行中であるが新規登録は受け付けていない。2014年2月~2015年12月まで442例の患者が登録され、内訳はコホート1で111人、コホート2で265人、コホート3人で68人であった。少なくとも25%以上のPD-L1発現が見られ、中央判定可能であった症例での奏効例は、コホート1で9/74人(12.2%[5.7-21.8])、コホート2で24/146人(16.4%[10.8-23.5])のコホート3では、21/68人(30.9%[20.2-43.3])であった。グレード3,4の治療関連有害事象は444例中40例(9%)に見られた。コホート1では111例中6例(5%)、コホート2で22/265例(8%)、コホート3では12/68(18%)であった。主な毒性としては肺臓炎(1%)、γGTP上昇(1%)、下痢(1%)、注入反応(1%)、AST上昇(2%)、トランスアミナーゼ上昇(2%)、嘔吐(2%)、および疲労で(1%未満)あった。特に重篤なものは27人(6%)に生じ、コホート1で5%、コホート2で5%、コホート3で12%であった。全体では肺臓炎1%、倦怠感1%、注入反応1%が重篤と判断されたが、これら免疫関連有害事象は、標準的な治療ガイドラインで管理可能であった。本研究から、多レジメンで治療された後の非小細胞肺癌の患者でのデュルバルマブの効果および安全性は、他の抗PD-1および抗PD-L1阻害薬と同じであった。奏効は全てのコホートに見られたが、EGFR-/ALK-(コホート2および3)の方がEGFR +/ALK+(コホート1)より奏効割合が高かった。EGFR+でもPD-L1発現が25%以上でデュルバルマブの効果が期待でき、EGFR+/ALK+についてはデュルバルマブの更なる研究が求められる。
感想
3つの試験を同時に行ったようで、非常に長い論文です。デュルバルマブはPD-L1阻害薬であり、先行するニボルマブ、ペムブロリズマブはPD-1阻害薬である点と少し作用点が違います。すでに先に行われたPACIFIC試験[Antonia SJ NEJM2017 PMID:28885881]で、抗がん剤+放射線後の地固め療法としての優位性を示しました。今回の試験はEGFR遺伝子変異陽性例を一つのコホートとして採用、評価している点が特徴になります。このEGFR/ALK陽性例の内訳はEGFR=87%、ALK=14%、1例両者陽性でした。ほぼEGFR陽性例についてのデータといえると思います。PFSは1.9ヶ月、さらにPD-L1=25%以上のサブセットについての奏効率は12%でした。これはコホート2つまりEGFR/ALK陰性でのPD-L1=25%以上での奏効率16.4%に近く、ドライバー変異があってもある程度この治療が期待できることが示唆されます。全生存期間についても、PD-L1=25%以上の長期生存に差がみられ見かけ上その割合はEGFR陰性のコホートより大きくなっています。本試験で免疫チェックポイント阻害薬の効果が、ドライバー変異がある症例でも利益がある可能性を示した点は大きいと思います。先に発表されたカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+/-アテゾリズマブ(IMpower150)のEGFR陽性サブセットでもPFSにおけるアテゾリズマブの上乗せ効果が見られたことから、ひょっとするとドライバー変異に対してはPD-1抗体ではなく、PD-L1抗体がやや有利かもしれません。