ニボルマブによる5年生存、喫煙者が有利

Five-Year Follow-Up of Nivolumab in Previously Treated Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer: Results From the CA209-003 Study.

Gettinger S et al.
J Clin Oncol. 2018 Jun 10;36(17):1675-1684.
PMID: 29570421

Abs of abs.
2つの第Ⅲ相試験において、PD-1阻害剤であるニボルマブは、既治療非小細胞肺癌における生存期間をドセタキセルと比較して延長した。今回はニボルマブの早期第I相試験からの5年間の追跡結果と、5年生存者の特徴を報告する。患者は既治療非小細胞肺癌であり、8週間のサイクルで2週間ごとに1mg、3mg、10mg/kgのニボルマブを96週まで投与されている。5年生存率の推定値は、すべての治療患者(N = 129)を対象とした場合16%であった。5年生存率は、扁平上皮癌(16%)および非扁平上皮癌(15%)で同様であった。5年生存者16人のうち、大部分(88%)が現在の喫煙者または元喫煙者であった。PD-L1発現が測定可能な10人のうち、70%にベースラインにおける1%以上のPD-L1発現が見られた。ニボルマブの最良効果はRECIST1.0で評価した場合12人(75%)にPRが得られており、SDとPDが2人づつ(12%)であった。5年生存した9名(56%)が最大96週間のニボルマブを完遂し、有害事象のために4人(25%)、病勢進行のために3人(19%)が中断していた。2016年11月現在、5年生存の12名(75%)がその後の治療を受けておらず、最後のフォローアップ時に病勢進行が見られなかった。本研究ではニボルマブは既治療小細胞肺癌患者の一部において、長期生存および長期間の奏効を達成していた。長期生存者には、多様な臨床背景および治療上の特徴を有していた。

感想
免疫チェックポイント阻害薬治療において、もっとも拾い上げたいのが長期生存する患者群です。効果予測因子がはっきりしていないため、結果として長期生存した集団からその特徴を観察するということは常に行うべき研究と言えます。今回は用量が異なるものの薬剤開発初期にニボルマブ投与を受けた129人を対象に解析しています。既治療例であることから、既存の抗がん剤だとおおよそ中央値8ヶ月程度の生存が一般的なところです。1年生存率が42%、2年生存率が25%、3年生存率が18%、5年生存率が16%という結果でした。生存曲線の形としては1年半くらいまで急速に落ちていきます。生存者が3割くらいになったところで極端に緩やかになるような感じです。目安として2年を超えるとかなり長期生存の可能性が高くなります。まず2年を安定して過ごせることが長期生存への関門になります。Table2に5年生存の16名の詳細が載っています。特徴は喫煙者が大半であることくらいで、男女比も偏りなく、年齢も44-80歳まで、術後再発あり、EGFR遺伝子変異陽性例もありなかなか特徴がつかめません。PD-L1<1%も散見されます。PD-L1染色100%は2人おり、1人は新規病変でPDであるものの、その後腫瘍縮小が見られ、いわゆるpseudoprogressionの可能性が高そうです。もう1人はSD(といっても27%の縮小ですが)でした。ついでにレスポンスの観点から追加すると、SDであったもう1例でも28%の縮小が得られており、SDであった長期生存の2例は、PRに極めて近い結果であったと言えます。最大効果がPDであったもう1例は、非喫煙者、exon20 insertionの症例でした。しかしニボルマブが9ヶ月間使われており、病状進行そのものが遅かった可能性もありそうです。あくまで私の印象ですが長期生存の条件は「喫煙者であること」「PRもしくはそれに近い反応が得られること」であり、PD-L1発現は強発現の方が多少有利であるものの、あまり関係がないことも頭の片隅に置いておく必要がありそうです。