Post Hoc Validation of Platinum Ineligibility in NSCLC From the Phase Ⅲ IPSOS Study.
Peters S et al.
J Thorac Oncol. 2025 Dec;20(12):1843-1850.
PMID:40706710.
Abs of abs,
第Ⅲ相IPSOS試験では、プラチナ製剤不適の非小細胞肺癌患者における単剤化学療法とアテゾリズマブの比較を行った。そこでは生存期間の改善、患者報告アウトカムの安定性、良好な安全性プロファイルを示した。しかしプラチナ不適格に関する確立した基準が存在しない。今回はIPSOS試験の事後解析として、再定義した基準を満たすプラチナ不適格(sPI)集団における臨床転帰を評価した。プラチナ2剤化学療法の対象とならない ⅢB/IV期非小細胞肺癌を、アテゾリズマブ投与群と単剤化学療法(ビノレルビンまたはゲムシタビン)投与群に2:1で無作為に割り付けた。sPI サブグループの患者は、PS3、80歳以上、PS2で関連する併存疾患がある、または70歳以上で関連する併存疾患がある患者と定義された。元のIPSOSの453人の患者のうち、405人(89%)がsPI基準を満たした。化学療法と比較して、アテゾリズマブは全生存期間を改善した(ハザード比0.78[0.63-0.98])。アテゾリズマブは、グレード3/4 の治療関連有害事象の発生率が低く(266例中46例 [17.3%] 対 134例中46例 [34.3%])、グレード5治療関連有害事象(266例中2例[0.8%]対134例中4例[3.0%])の発生率が低く、患者報告による健康関連QOLの安定化または改善が認められた。今回のサブグループ解析から、sPI集団においてアテゾリズマブによる初回治療が、元集団の結果と一致する長期全生存期間と良好な安全性プロファイルを示すことが示唆される。さらに、sPI集団におけるプラチナ製剤不適格性の選択基準は、実地臨床における治療選択のための体系的なアプローチを提供する可能性がある。
感想
あまり取り上げられていませんが元試験のIPSOS試験[Lee SM LANCET2023 PMID:37423228]は、実地臨床において重要な試験です。試験自体はシンプルで、プラチナ不適な進行非小細胞肺癌(EGFR/ALK除く)に初回治療としてのアテゾリズマブvs化学療法の比較で、PD-L1発現の制限はありません。このプラチナ不適として元試験では70歳未満のPS2-3、70歳以上の合併症ありを主体とした”deemed unsuitable”と書かれています。IPSOS試験の結果を臨床現場に還元するためにはより明確な基準が必要だろうと考えられたのがsPIです。これはPS3、80歳以上はそれだけでよく、PS2で併存疾患あり、70歳以上で併存疾患ありとなっています。併存疾患とは心血管系だけでなく認知症なども含まれます。このような集団でも「70歳以上で併存疾患あり」を多くすれば予後は良くなりそうに見えます。今回そのような集団は10%しかおらず、年齢中央値が76、PS2が7割強、男性7割強といった構成です。効果としてはアテゾリズマブOS10.3カ月、化学療法OS中9.4カ月であり、この化学療法のOSは昔のELVIS[Gridelli C Oncologist2001 PMID:11181997]やMILES試験[Gridelli C JNCI2003 PMID:12618501]の時代のOSが半年程度であることから妥当と言えます。つまり特に予後の良い集団を選択したわけではないということです。治療関連死亡はアテゾリズマブで0.8%、化学療法で3%と許容範囲内です。サブグループ解析でもPD-L1陰性例の延命効果がありそうなのですべての人に使えると良いのですが、現時点ではTC3/IC3の人しか初回アテゾリズマブは使えません。ただそのような集団で高齢、合併症で単剤しかできない人にはこの治療を考える余地があるということになります。