Atezolizumab for First-Line Treatment of Metastatic Nonsquamous NSCLC.
Socinski MA et al.
N Engl J Med. 2018 Jun 14;378(24):2288-2301.
PMID: 29863955
Abs of abs.
アテゾリズマブの殺細胞効果は、VEGFを介した免疫抑制をベバシズマブ使うことで阻害することで増強され得る。今回のオープンラベル、PhaseⅢ試験はアテゾリズマブを抗がん剤+ベバシズマブに上乗せした場合の効果を検証した。対象は非扁平上皮非小細胞肺癌で、抗がん剤治療が未治療であるものとした。患者はランダムに、アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(ACP)、ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(BCP)、またはアテゾリズマブ+BCP(ABCP)に割り付けられ、4または6サイクルを3週間毎に繰り返した。維持療法はベバシズマブ、アテゾリズマブの一方または両方である。プライマリーエンドポイントは2つ設定し、野生型遺伝子(WT群; EGFR/ALK遺伝子変異を有する患者を除外)の患者と、 WT群における腫瘍エフェクターT細胞(Teff)遺伝子が高い群(Teff高WT群)における無増悪生存期間とWT群における全生存期間とした。ABCP群をBCP群と比較し、その後ACP群とBCP群を比較した。WT群では、356人がABCP群に、336人がBCP群に割り付けられた。無増悪生存期間の中央値は、ABCP群がBCP群よりも長かった(8.3ヶ月対6.8ヶ月、ハザード比0.62[0.52-0.74]; P<0.001 ); 高TeffのWT群においてはそれぞれ、11.3ヶ月、6.8ヶ月であった(ハザード比0.51[0.38-0.68]; P<0.001)。無増悪生存期間は、EGFRまたはALK遺伝子改変を含む全体、低またはPD-L1陰性の患者においても、さらに低Teff群および肝臓転移を有するものにおいてもABCP群がBCP群よりも長かった。WT群における全生存期間中央値は、BCP群よりもABCP群でより長かった(19.2ヶ月対14.7ヶ月、ハザード比0.78[0.64-0.96];P=0.02)。ABCPの安全性は、既存の薬剤の安全性報告と一致していた。本試験により、PD-L1発現およびEGFR/ALK遺伝子変異にかかわらず、進行非扁平上皮非小細胞肺癌患者においてベバシズマブ+化学療法にアテゾリズマブを上乗せすることによって、無増悪生存期間および全生存期間を有意に改善した。
感想
3群に割り付け、その間の比較を行うため面倒な設定になっています。またTeffといった妙なファクターが入っており、結果を混乱させています。プロトコール改定を経て、プライマリーエンドポイントが4剤併用対CBDCA+PAC+BEV(有意水準としてP=0.012をPFSに、P=0.038をOSに振り分けています)をまず解析し、その後CBDCA+PAC+アテゾリズマブ対CBDCA+PAC+BEVを比較することになっています。しかもTeff高値と野生型でさらにアルファを振り分けて複雑な統計設定となっています(補遺Fig1)。このような場合、細かく見るより全体としてどうであったのかをとらえておくのが得策です。まず野生型での4剤対CBDCA+PAC+BEVを見ていきます(Fig1)。無増悪生存期間は8.3ヶ月対6.8ヶ月で、4剤つぎ込んだ割にはあまり大したことがないような印象です。しかも3ヶ月くらいまでは生存曲線が重なり、これまでの傾向を再現しています。またWT群での全生存期間(Fig3)も8ヶ月あたりから開いており、どこで定常状態になるのかはもう少しイベントが起こらないとわかりません。結局4剤の定常状態がどこになるかが重要で、20%くらいであれば、免疫チェックポイント阻害薬で長期に利益を受ける集団は、単剤で使った場合と結局あまり変わらないということになります。治療関連死はABCP群で11人(2.8%)、BCP群で9人(2.3%)でした。出血関連が多いようで主にベバシズマブに起因するもの印象です。これを許容とみるかどうかも議論があります。
さて今後、免疫チェックポイント阻害薬+抗がん剤の併用が初回治療で標準治療と入ってくることは確実なようです。製薬会社の競争による治療の進歩は望ましいですが、果たしてこの4剤治療はどれくらいの人に真に適合するのでしょうか。日々の実地診療では免疫チェックポイント阻害薬の、さまざま副作用および継続の可否の判断など、課題が山積しこれまで以上に経験が求められています。この4剤治療も含め、免疫治療の複合治療はチャンピオン症例だけが耐えられる「理想化されたモデル治療」の追求になっているような気がしてなりません。2000年初頭から積み重ねられてきたEBMですが、理想的なごく一部の症例と現実的な大多数の症例の治療が大きく乖離し、「私のやり方」が水面下ではびこるようにはなって欲しくありません。