ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法におけるサイトカイン放出症候群

Five Cases of Cytokine Release Syndrome in Patients Receiving Cytotoxic Chemotherapy Together With Nivolumab Plus Ipilimumab: A Case Report.

Shiraishi Y et al.
J Thorac Oncol. 2023 Nov 7 Epub ahead of print.
PMID:37943237.

Abstract
未治療進行非小細胞肺癌を対象に、プラチナベースの化学療法とニボルマブ+イピリムマブの併用療法とプラチナベースの化学療法とペムブロリズマブの併用療法との比較第3相臨床試験を実施した。ニボルマブ+イピリムマブ群では3例のサイトカイン放出症候群(CRS)を含む治療関連死の割合が高いため、295例の治療後に試験は早期中止された。またニボルマブ+イピリムマブ群148例の内、うまく管理できたCRSは2例であり、CRSは計5例(3.4%)出ていた。これら5例の詳細を提示する。患者背景や発症時期は異なるが、5例すべてでCRS出現前に発熱が認められた。治療担当医は、ニボルマブ+イピリムマブ投与中の発熱がCRS発症の前兆である可能性を認識すべきである。

感想
JCOG2007は免疫2剤(ニボルマブ+イピリムマブ)+化学療法とペムブロリズマブ+化学療法を全生存期間を比較する目的で行われた試験です。2022年4月に治療関連死が多いためにいったん中止、リスクとされたWBC>8000、NLR>5を避けるようにして再開するも、治療関連死亡が出たため今年の3月に中止となっています。経過は国立がん研究センターのサイトに詳述されています。
今回はJCOG2007に登録された症例で、サイトカイン放出症候群と考えられた5例の報告です。要約にもあるように試験の死亡例のまとめではなくて、特に重要性が高いと思われるサイトカイン放出症候群のまとめであり、生存転帰の症例も含まれています。免疫2剤のみならず単剤でもあり得ますし、今後臨床導入されると思われるTcellエンゲ―ジャーでも対応が要求される病態です。これは急激な発症、感染症と区別しにくい、時間が経ってからでも発症しうるという点で非常に示唆に富む症例報告です。いつでもあり得るという点で管理が難しく、進み始めると止められない印象です。治療にはステロイドとトシリズマブが主力になりますが、感染症の否定がどうしても難しいため臨床医に決断を迫る点でも負荷がかかります。呼吸器内科医はよくわからない重症肺炎にステロイドパルスをすることがあるので他科に比べて決断はまだしやすい方かも知れません。これら5例に共通点・法則性を見出そうとするのは人間の特性ですが、まだ何もわかっていません。ざっと眺めておくのが得策でしょう。