Chemotherapy in non-small cell lung cancer patients after prior immunotherapy: The multicenter retrospective CLARITY study.
Bersanelli M et al.
Lung Cancer. 2020 Oct 22;150:123-131.
PMID: 33130353.
Abs of abs.
治療薬が存在するドライバー変異以外の非小細胞肺癌(NSCLC)では、初回あるいは2次治療として免疫チェックポイント阻害薬を使用し進行してしまった場合、化学療法が唯一可能な選択肢として残る。今回は進行NSCLC患者における免疫療法後のサルベージ化学療法の有効性を検討した。イタリアの20施設でのレトロスペクティブ研究を計画した。内容は2013年11月から2019年7月までにサルベージ化学療法治療を受けた進行NSCLC患者の転帰を調べることとした。本試験のプライマリーエンドポイントは全生存期間であり、化学療法開始から死亡までの期間として定義した。副次エンドポイントとしてサルベージ化学療法については無増悪生存期間、PFS、奏効率、毒性、探索的バイオマーカーとしてLDH、免疫療法中の好中球・リンパ球数比も解析した。342人のNSCLC患者が対象となり、サルベージ化学療法は全生存期間中央値6.8カ月[5.5-8.1]、PFS中央値4.1カ月[3.4-4.8]、奏効率22.8%であった。多変量解析における全生存期間の有意な予測因子(性別、ECOG PS、免疫療法の病勢コントロール)を組み合わせて”Post-CKIスコア”を作り検討したところHarrell’Cは0.65[0.59-0.71]であった。結論としては遅い治療ラインであっても、免疫療法の後は化学療法の感受性が高まる可能性を支持するものであった。Post-CKIスコアは、免疫チェックポイント阻害薬後の3つの異なる予後サブグループにうまく区分けし、NSCLCにおける遅い治療ライン設定の意思決定に有用なツールとなる可能性を示した。
感想
免疫チェックポイント阻害薬投与後の化学療法の奏効率が上がる現象については、数多くの報告があります。中でも今年初めに報告されたWJOG10217L[Kato R J ImmunotherCancer2020 PMID:32066647]は、1400例あまりの規模を持ち、さらに傾向スコアマッチングを行っており信頼性の高いデータです。その報告よれば、奏効率は18.9%対11.0% オッズ比1.71[1.19-2.46];p=0.004)で有意に上昇するもののPFS、OSには反映されなかったということでした。
今回の報告は傾向スコアマッチングを用いず、単なる免疫療法後の抗がん剤の後ろ向き研究なので、研究精度という点では甘くなります。見るべきは”Post-CKIスコア”を作り検討したという点です。これは女性、PS=0 免疫療法で病勢コントロールできていたのであれば0点、男性、PS=1、免疫療法でコントロールが得られなかったのであれば1点をつけます。さらにPS=2なら2点をつけます。このスコアでうまく予後が層別化され、C統計量もまあまあだったということですが、免疫療法後に特に使える指標かどうかまでは言えません。つまり何の治療にしろ前治療でコントロールできれば予後良好でしょうし、男性より女性の方が予後が良いし、PSについては言わずもがなです。私はWJOG試験と合わせて免疫療法後の化学療法の奏効率が高いのは事実でしょうが、それを目的に免疫療法を無理に行うのは無意味で、従来通り全身状態をよく見て判断すべきということと考えています。言い換えると、免疫療法に対してリスクのある人に、その次の治療の効果を期待して、そのためだけに免疫療法をいれておくという考え方はしなくてもよいということです。