Phase II trial of single agent amrubicin in patients with previously treated advanced thymic malignancies.
Hellyer JA et al.
Lung Cancer. 2019 Nov;137:71-75.
PMID:31557562
Abs of abs.
胸腺悪性腫瘍に対する治療はごく限られている。今回は第三世代アンスラサイクリンかつトポイソメラーゼⅡ阻害薬であるアムルビシン単剤を用いたこの腫瘍に対するデータを提示する。オープンラベル単剤のphaseⅡ試験として2施設で行った。胸腺腫と胸腺癌を対象とし、一レジメン以上の化学療法を行っていれば適格とした。最初の18人は40mg/㎡、3日間連続投与としたが、発熱性好中球減少が多いため以降の15人では35mg/㎡とした。33人(胸腺腫14人、胸腺癌19人)が対象となり前治療の中央値は2であった。奏効率は18%[8.2-32.8]、無増悪生存期間中央値7.7ヶ月(胸腺腫8.3ヶ月、胸腺癌7.3ヶ月)、全生存期間は29.7ヶ月(胸腺腫54.1ヵ月、胸腺癌18ヶ月)であった。用量減少にも関わらず発熱性好中球減少が多く(7例)、一人はこの関連で死亡した。5人がEF50%以下に低下し、1人が治療中止となった。今回の研究から既治療胸腺悪性腫瘍に対してアムルビシン単剤治療は有望な結果を示した。発熱性好中球減少が多く支持療法が不可欠であり追加研究が必要とされる。
感想
胸腺腫、胸腺癌はマイナーな存在なだけに治療に迷うことが多い疾患です。定義は「胸腺腫は,Tリンパ球の成熟に重要な役割を果たす胸腺上皮に由来する腫瘍のうち細胞異型のないものである。一方,胸腺癌は細胞異型を伴うものである」(肺癌診療ガイドライン2018)となっています。周辺臓器への浸潤のあるものについては何らかの治療を急がなくてはならないことは明らかですが、検診などで見つかり非常に経過の遅い、もしくはほとんど進行しないものもあり切除時期や切除範囲についてははっきり決まっているわけではありません。切除不能や再発例の「胸腺腫」に対して同ガイドラインを見ると、「化学療法を行うよう推奨する」となっています。しかし厳密には保険適用になる抗がん剤は存在せず、「シスプラチンおよびアンスラサイクリン系抗癌剤の併用療法を行うことを推奨する」となっています。主に想定されているのはCODE療法でしょうが、実臨床では後述する胸腺癌に準じてCBDCA+PAC(or nabPAC)が使われることが多いように思います。そして2次治療が勧められるかのCQに対しては、「化学療法は行うよう勧められるだけの根拠が明確でない」とされています。ややこしいですが「胸腺癌」に対しては初回治療として「カルボプラチンとパクリタキセルまたはアムルビシンの併用療法を行うよう提案する」、また2次治療については同じで勧められる根拠が明らかではないとされています。
前置きが長くなりましたが、このような状態での2次治療におけるアムルビシンを検討したのが今回の研究です。患者背景として前治療にドキソルビシンありが、胸腺腫で86%、胸腺癌で32%でエビデンスに沿った一時治療がなされていることが伺えます。ただこの前治療にドキソルビシンが含まれるか否かでのPFSの違いはあまり見らません(7.4 vs 7.7ヶ月, p=0.76)。発熱性好中球減少が多いのは小細胞肺癌の治療ですでに多く経験されており、peg-Gを使えば管理可能と言えます。したがって奏効率、PFSとも治療として有望と言えるレベルにあると思います。問題はペムブロリズマブも有効であることで、これまで単剤での報告が2報[Giaccone G LancetOncol2018 PMID:29395863][Cho J JCO2019 PMID:29906252]あります。奏効率は20%程度ありますが、当ブログでも過去に取り上げている通り、胸腺腫瘍に免疫チェックポイント阻害薬を使うとirAEの頻度が高いため注意が必要です。保険適用は別問題として、このような状況で両方使うとすれば順序で迷うところです。