Nivolumab plus Ipilimumab in Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.
Hellmann MD
N Engl J Med. 2019 Sep 28.[Epub ahead of print]
PMID:31562796
Abs of abs
非小細胞肺癌に対する早期臨床試験ではニボルマブ単剤と比較して、ニボルマブ+イピリムマブの奏効率が良好であり、とりわけPD-L1発現の腫瘍においてそうであった。ニボルマブ+イピリムマブの非小細胞肺癌に対する長期成績が求められている。このオープンラベル第Ⅲ相試験においてⅣ期あるいは再発非小細胞肺癌でPD-L1発現が1%以上の症例をランダムに、ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ単剤、抗がん剤に1:1:1に割り付けた。同時に1%未満の症例も同様に1:1:1に割り付けた。すべての患者が未治療である。今回報告するプライマリーエンドポイントはPD-L1が1%以上におけるニボルマブ+イピリムマブと抗がん剤を比較した全生存期間である。この集団においてニボルマブ+イピリムマブ群の全生存期間中央値は17.1ヶ月[15.0-20.1]、抗がん剤では14.9ヶ月[12.7-16.7]、P=0.007であった。2年生存率はそれぞれ40.0%、32.8%であった。効果持続期間は23.2ヶ月と6.2ヶ月であった。全生存期間に対する利益はPD-L1が1%未満の集団でも観察され17.2ヶ月[1.8-22.0]と12.2ヶ月[9.2-14.3]であった。本試験に参加したものをすべて合わせると、ニボルマブ+イピリムマブ群の全生存期間は17.1ヶ月[15.2-19.9]、抗がん剤で13.9ヶ月[12.2-15.1]であった。グレード3,4の有害事象の割合は32.8%、36.0%であった。本試験より、PD-L1発現に関わらず、初回治療としてのニボルマブ+イピリムマブの全生存期間は抗がん剤に比較して長かった。長期追跡をしても新たな有害事象の問題点は見当たらなかった。
感想
あくまで論文を読む限りでは、3群あってもプライマリーエンドポイントは2群比較という変わった設定です。従ってプライマリー以外の解析は補遺に回されています。内容としては、初回治療でPD-L1≧1%の集団でニボルマブ+イピリムマブ(ICIコンボ)は殺細胞性抗がん剤に対してどうなのかを見た試験と言えます。すでに標準治療が殺細胞性抗がん剤+免疫療法になっている現在、コントロール群が抗がん剤単独では出遅れ感を否めません。2019年ASCOで報告されたKEYNOTE189試験アップデートによれば、全生存期間中央値は22.0ヶ月、抗がん剤が10.7ヶ月でハザード比0.56[0.45-0.70]でした。背景は多少異なりますが、今回の試験で抗がん剤群が若干良いことを考えると運悪く免疫療法に向かない集団が多かったのかも知れません。その証拠に主たる解析であるPD-L1≧1%の生存曲線(Fig1A)を見ます。すると半年頃までニボルマブ+イピリムマブ群が抗がん剤を見た目で下回って交差しており、あまり良い結果とは言えません。このため要約にハザード比(計算上は0.79)が記載されていません。しかもサブグループ解析では肝転移、非喫煙者での点推定値が抗がん剤が良好な傾向に寄っており、細かく見ていくと散々な結果です。さらに両群の見た目の開きはむしろPD-L1<1%の方が大きく見えます(ハザード比0.79、0.62)。しかし著者はこれを抗がん剤群のばらつきによるものと判断しています。その根拠としてPD-L1=1%以上、未満でのニボルマブ+イピリムマブ群の1年生存率、2年生存率がほぼ同等であることを挙げています。しかしニボルマブ+イピリムマブで全くPD-L1が役に立たないかというとそうでもなく、奏効率は<1%で27.3%、1%≦で35.6%、50%≦では44.4%と目安にはなりそうです。毒性は全グレードで皮膚炎(34%)、内分泌障害(23.8%)、胃腸障害(18.2%)などニボルマブ単剤と比べて1.5倍の印象です。主題から外れますが、PD-L1=1%以上におけるニボルマブ単剤との比較がFigS3に示されています。全生存曲線についてはちょうどニボルマブ+イピリムマブと抗がん剤の間を行っており、イピリムマブのわずかな上乗せ効果はありそうです。今回のニボルマブ単剤群の生存期間中央値は15.7ヶ月、これに対しPD-L1≧1%で行ったKEYNOTE042試験のペムブロリズマブ単剤群は16.7ヶ月でほぼ同等でした。
敢えて今回の結果を日常臨床で考慮する場面があるとすれば、PD-L1=1%以上で、何らかの理由で抗がん剤は使えないが、ペムブロリズマブ単剤ではもったいなさそうな人ということになります。