定位放射線治療での予後予測

Nomogram Predicting Overall Survival Benefit of Stereotactic Ablative Radiotherapy for Early-Stage Non-Small Cell Lung Cancer.

Jacobs CD et al.
Clin Lung Cancer. 2022 Mar;23(2):177-184.
PMID:34301453.

Abs of abs.
早期ステージの非小細胞肺癌患者において、定位放射線治療(SABR)対経過観察の全生存期間(OS)を予測するノモグラムを開発し検証した。2004年から2015年にNational Cancer Database(NCDB)でSABR(1~10分割で30~70Gy、線量≧100Gy10)または経過観察による治療を受けたT1-T2N0の非小細胞肺癌を特定した。予後因子および病理学的因子についてSABRと観察コホートをマッチングさせた。2年および5年OSを予測する多変量Cox比例ハザードモデルを作成し、その際の因子は後ろ向きに取捨選択しノモグラムを作成した。モデルの予測精度は、ROC曲線とROC-AUCにより評価した。計22073人が基準を満たし、4418組のマッチングペア(合計n=8836)がノモグラム作成のために作られた。多変量解析でOSの改善と最も強く関連した因子は、若年であること(10歳区切りのHR 0.82、P<0.001)、女性(HR 0.81、P<0.001)、合併症が少ないこと(0対3、P<0.001)、腫瘍径(3cm以下対5.1-7cm、P<0.60)、腺癌であること(P<0.001)、SABRを受けたこと(P<0.001)であった。SABRと組織型の間の相互作用は、OSと有意に関連していた(P = 0.017)。腺癌と比較した場合、経過観察(HR 1.44[1.33-1.56])においてと、SABRを受けた場合の扁平上皮癌の患者(HR 1.24[1.14-1.35])は、有意にOSが悪かった。ノモグラムは、全追跡期間にわたって統合されたAUCが0.694であり、OSの予測にかなりの精度があることが示された。今回作成のノモグラムは、手術不能な早期ステージ非小細胞肺癌患者がSABRまたは経過観察の際の、2年および5年後のOSを推定する。NCDBに含まれていない他の変数を組み込むことで、モデルの精度が向上する可能性がある。

感想
肺切除が向かないあるいは希望しない患者に対するSABRは確立した医療と言えます。報道の影響もあって「切らない治療」「内視鏡治療」を希望する方も増えています。仕方のないことですが、ネットなどの情報では原発と転移の違い、癌種の違いなどを全く考えず言われるため説明に長時間を要するケースもあります。今回の主題はSABRの予後予測ですが、ノモグラムを使っています。これ自体はRパッケージrmsを使用して行われています。使い方についてはこのサイトに詳しいです。パッケージの解説をよむとrmsは生存解析に関する総合ソフトで、survplot関数にはnumber at riskを描く機能もあるようです。詳しいことはともかく、今回の多変量因子を入れると推定予後を算出するページをweb上で公開されています。実践はこのサイトにあります。研究にはいろいろな方向性があるかと思いますが、私自身は数少ない因子での単純な予測モデル構築に魅力を感じます。