定位放射線治療:一回照射の注意点

Practical considerations of single-fraction stereotactic ablative radiotherapy to the lung.

Kang TM et al.
Lung Cancer. 2022 Aug;170:185-193.
PMID:35843149.

Abs of abs.
定位放射線治療(SABR)は、手術不能な若いステージの非小細胞肺癌およびオリゴメタに対する治療として確立している。この状況における一回照射SABRは、優れた局所制御と安全性プロファイルに支えられており、これまでのデータに基づくと複数回照射のSABRと同等と思われる。一回照射SABRの効率性と外来受診の減少は、COVID-19流行時には特に有用であった。関心が高まっているにもかかわらず、中心に近い病変、複数病変、線量制限のある近傍臓器、重度の呼吸器疾患を併発している患者などのサブグループにおける一回照射SABRは依然として論議がある。今回の総説では、原発性肺癌およびオリゴメタにおける一回照射SABRを評価するランダム化試験の概要、よく遭遇する臨床的課題、SABRの免疫効果、技術および費用対効果の考察を述べる。

感想
ここ10年で見ると実際に見る患者の高齢化がかなり進んでいます。希望により抗がん剤をする超高齢者も増えてはいますが、有害事象も多く効果が目覚ましいというほどではないというのが印象です。一方で定位照射は確実に増えているように思います。高齢者では併存症も多いので、心疾患フォロー中、あるいは整形疾患の術前検査で偶然発見といったケースも多いです。
定位照射は数回に分けて行うことが普通ですが、今回は1回照射について書かれています。この方法の問題点は、長期効果と中心に近い病変での安全性に懸念があり、胸壁に近い病変では肋骨骨折、胸痛も増える可能性があることです。逆に言えばそのようなリスクのない病変には一回照射でもいいのかもしれません。
当たり前の話ですが、複数回であっても間質性肺炎合併例にはリスクが高いです。間質性肺疾患合併例に対して複数回照射の前向き試験も行われているようです。最近はFLASHというさらに高線量を集中的に当てる方法や、粒子線の一回照射の方法もあるようです。
定位照射vs手術の議論は尽きません。今回の定位照射の進歩の一面ですが、手術の方も以前取り上げた縮小手術が加わることにより、どちらが良いかどうかの議論(混乱?)はさらに続くことになります。