定位照射検討のためのリンパ節に対するEBUS-TBNA:陰性は真の陰性と同じ

The role of endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration in stereotactic body radiation therapy for non-small cell lung cancer.

Hashimoto K et al.
Lung Cancer. 2018 Sep;123:1-6.
PMID: 30089578

Abs of abs.
今回の研究目的は、EBUS-TBNAの診断精度を定位放射線療法(SBRT)が考慮されている患者で評価し、CTとPETとで比較することである。単一施設で後ろ向き研究を行った。適格基準は、1)直径が6cm未満の生検で確定、あるいは非小細胞肺癌疑い病変、2)遠隔転移なし、3)2008年4月から2014年11月にEBUS-TBNAステージングをした、4)SBRTが適格である。CTおよびPETでのリンパ節陽性とは、短径≧1cmおよびSUV≧2.5と定義した。臨床病理学的にリンパ節陽性(NPCP)とは、EBUS-TBNAで悪性と確認された、またはSBRT後1年以内に肺門または縦隔リンパ節に再発にした場合に陽性と定義された。画像上リンパ節陽性かつEBUS-TBNA陰性群(ケース群)と腫瘍サイズ、放射線用量、手術適応で適合させSBRTを施行した群(コントロール群)を作りSBRT後の生存率を比較した。35人の適格患者が存在した(平均年齢77±8.2;平均径2.5±1.0cm)。30人が手術不能とされた。放射線学的にリンパ節陽性の24人のうち20人がEBUS-TBNA陰性であった。全11例の放射線所見陰性の患者は、EBUS-TBNAでもN0であった。31人の患者がSBRTを受けた。臨床病理学的にリンパ節陽性(NPCP)に対するCT、PET、EBUS-TBNAの患者個人における感度/特異度は、それぞれ42.9/64.3%、100/64.3%、57.1/100%であった。生存率比較では1:4のマッチコホートが得られた。局所無再発生存率(p=0.71; HR=0.88[0.45-1.74])および無再発生存率(p=0.77; HR=1.10[0.58-2.11])はコントロール群と有意差がなかった。本試験から、放射線所見でリンパ節陽性の患者は、EBUS-TBNAを検討する対象となり、さらにSBRTの候補でもあり得る。

感想
転移診断を行う際に、CTで腫脹が見られずともPET陽性で迷ったり、あるいは、PETで集積があっても手術してみると転移がなかったということはよく見られます。PETはかなり正確という印象を受けますが、PETでステージングすることで余計に悩ましくなってしまうことは少なからず経験します。それでも定位照射しかできない症例があります。今回の研究は、そのような病変にEBUS-TBNAを行い「陰性」であったものが正解であったかという検討とも言えます。しかしそれに留まらず、陰性を根拠にSBRTを行った場合に生存率に影響があるかという、極めて臨床的意義の高い議論に置き換えています。テーマの立て方が非常に上手であると感じます。リンパ節陽性が結局「真」であることを捕まえる「感度」については、CTが42.9%、PETが100%、EBUSが57.1%で、陰性を陰性と判断する「特異度」は64.3%、64.3%、100%でした。表から計算する陽性的中率はCTで3/13=23%、PETで7/17=41%となりました。症例はすこし複雑でして、EBUSで陽性であった4例はSBRTされず、その後1年以内にリンパ節再発を来したものが3例ありました。つまり偽陰性率が3/7=43%に見られました。まとめるとリンパ節転移はPETでは偽陽性が多く、EBUSでもなかなか捕まえきれるものではないということになります。しかし捕まえきれないとは言え、そのデータを参考にSBRTを行った場合にどうなるかというのが次の話題になります。症例数が少なくかつケースコントロールになっているので信頼度は落ちますが、放射線学的にリンパ節転移のないものとほぼ同等の予後を示すことがわかります。真にリンパ節転移しているかどうかも非常に大事ですが、検査結果が転帰と関連するか?という観点からみれば、EBUS陰性は陰性として扱っても良いということになります。以前取り上げた臨床的に肺癌と診断されたものにSBRTをしても安全かといった研究にも見られるように、検査技術の進歩とともに組織検体の直接確認よりも、間接的な結果で判断した場合アウトカムが変わるかということも検討すべき時期に来ています。例えば画像で肺癌らしくて、組織生検なしに血清で19delが検出された場合にEGFR遺伝子変異陽性肺癌として、TKIで治療しても大きく結果は変わらないと思います。最近のリキッドバイオプシーの結果を見ていると非侵襲領域の進歩が早く考えてしまいます。