小型肺癌における縮小手術、日本と海外でほぼ同じ結果

Lobar or Sublobar Resection for Peripheral Stage IA Non–Small-Cell Lung Cancer

Altorki N et al.
N Engl J Med 2023; 388:489-498
PMID:

Abs of abs.
末梢小型非小細胞肺癌が増加し、肺葉切除に代わる縮小手術への関心が再び高まっている。今回は多施設共同、非劣勢試験として臨床病期がT1aN0(腫瘍径2cm以下)の患者を、術中にリンパ節転移陰性を確認した後に縮小手術を行う群と、肺葉切除術を行う群に無作為に割り付けた。主要評価項目は無再発生存率とし、これは無作為化から疾患の再発または何らかの原因による死亡までの期間と定義した。副次評価項目は、生存期間、局所および全身再発、肺機能とした。2007年6月から2017年3月までに、697人の患者が、縮小手術(340人)と肺葉切除術(357人)に割り付けられた。中央値で7年の追跡後、無再発生存率において、縮小手術は肺葉切除に非劣性であった(ハザード比1.01[90%CI 0.83-1.24])。さらに縮小切除の生存は肺葉切除と同等であった(ハザード比0.95[0.72-1.26])。5年無再発生存率は、縮小手術で63.6%[57.9-68.8]、肺葉切除術では64.1%[58.5-69.0]であった。5年生存率は、縮小手術で80.3%[75.5-84.3])、肺葉切除術で78.9%[74.1-82.9]であった。局所再発率と遠隔再発率は、両群間に差はなかった。術後6ヵ月で、予測FEV1%の中央値における群間差は2%であり、縮小手術が良好であった。腫瘍径2cmまでで、肺門・縦隔リンパ節転移陰性が組織学的に確認された末梢型非小細胞肺癌において、無再発生存率に関して、縮小手術は肺葉切除術より劣ることはなかった。また生存率は2つの術式で同等であった。

感想
昨年の世界肺癌で報告された試験が論文化されています。昨年に取り上げたJCOG0802/WJOG4607L1試験[Saji H Lancet2022 PMID:35461558]も、ほぼ同じコンセプトで行われており、まったく同様の傾向を示しています。小型肺癌に対しての縮小手術に楔状切除を含めるかどうかの違いはありますが、今後の方向性は明らかと思います。今回の報告とJCOGの報告は共にエディトリアルでも取り上げられ、プレシジョン手術の時代の幕開けとして取り上げられています。縮小手術におけるポイントとしてはリンパ節転移陰性を確認していることで、この点は実地においても維持すべき安全対策としています。ここのところは今後の課題で、リンパ節転移の有無を正確に予測できるかどうかでより切除範囲の小さい楔状切除が選択できるかの判断に関わります。
さて両試験の生存曲線は共通して微妙に縮小手術の方がよく、また無再発生存のハザードはほぼ1で、局所再発はわずかに縮小手術が悪いという結果です。全生存の差はJCOGの方が大きいですが、ほとんど同じ結果と言えます。この結果を見れば縮小手術が標準と言えるでしょう。
今後手術は2つの方向性になると思います。一つはリンパ節転移がなく小さいものは縮小手術、もう一つはリンパ節転移があるもので、これは術前化学療法+免疫療法でしょう。特に後者で術後再発の場合、ドライバー変異がなければ化学療法の余地は残っていないかもしれません。