循環細胞RNAでALK検出の感度を上げられるか

Longitudinal Tracking of ALK-Rearranged NSCLC From Plasma Using Circulating Tumor RNA and Circulating Tumor DNA.

Heeke S et al.
JTO Clin Res Rep. 2025 Jan 6;6(4):100795.
PMID:40160974

Abs of abs,
ALK陽性非小細胞肺癌に対するTKI投与はいわゆるprecision medicineに革命をもたらしたが、リキッドバイオプシーからの遺伝子再構成の検出は依然として困難である。RNAベースの検出は、遺伝子再構成の検出において有望な感度を示しているため、循環腫瘍DNA(ctDNA)に加えて循環腫瘍RNA(ctRNA)を追加するリキッドバイオプシーが検出を向上させると考えられる。さらに、ベースライン時の遺伝子融合検出と転帰との相関も検討した。IV期再発非小細胞肺癌でALK陽性患者を対象に、局所治療とブリガチニブを評価するBRIGHTSTAR試験(NCT03707938)に登録された患者33人の血漿検体86検体で検討した。ここでctDNAを解析して80遺伝子の遺伝子再構成と変異を検出し、さらにctRNAを解析して36遺伝子の遺伝子配置を検出する次世代シーケンサーを用いて後ろ向きに行った。ALK再構成はベースライン時に28例中15例(54%)で検出され、うち8例はctDNAとctRNAの両方で検出された。ALK遺伝子再構成は局所治療前に2人でctRNAで検出されたが、局所療法後に完全に消失した。ベースライン時のALK融合体の検出は、有意に無増悪生存期間短縮と関連していた(p=0.033)。ベースライン時にALK遺伝子再構成が検出された患者の血漿遊離細胞DNA濃度は、遺伝子融合が検出されなかった患者よりも有意に高かった(12.3ng/mL対20.2ng/mL、p=0.0046)。リキッドバイオプシーにctRNAを追加することで、ALK再構成の検出が増し、特にベースラインでの検出は有意な無増悪生存期間の悪化と関連した。

感想
この元になった試験は、 8週間のブリガチニブ治療後、放射線療法/手術による局所療法を行うという内容です。つまりベースライン、ブリガチニブ後(preLCT)、LCT後という測定ポイントとなります。血中のRNAを検出するのが難しい理由として、RNaseの存在により不安定、量も少ないことが挙げられます。ただし元々遺伝子再構成はctDNAでも検出が難しいとも言えます。また腫瘍量が多いほどctDNAは検出されやすいですが、ctRNAはあまり関連がないようです。他のドライバー変異・野生型からの耐性化機序として、ALK変異はわずかですが存在します。治療可能という意味では見過ごせないわけで、なおかつ全例再生検できるわけでもないので、リキッドでの検出感度をあげる意味は少なくないです。無増悪生存との関係は、進行し腫瘍量が増えればctDNAが検出されやすくなるので、時期の差を見ている可能性も否定できません。面白いのはctRNAが壊れやすいので、これが検出されるほど悪化している=予後不良というわけでもないところです。Fig2Aでは無増悪生存期間がベースラインで無検出>ctRNA>ctDNAとなっています。今後組織検査からリキッドへの流れは加速するでしょうが、検査系の標準化と安定化が大きな壁です。