Salvage Surgery After Chemotherapy and/or Radiotherapy Including SBRT and Proton Therapy: A Consecutive Analysis of 38 Patients
Aki K Kobayashi et al.
Lung Cancer. 2020 Jul;145:105-110.
PMID:32422344
Abs of abs.
進行非小細胞肺癌において当初根治を目指した化学放射線療法、化学療法、放射線治療後に局所再発を来すことが頻繁に見られる。今回は根治目的の外科治療以外の治療を行った後にサルベージ肺切除を行った症例について適切かどうか評価するとともに術後合併症と死亡率について評価した。2000年から2018年において局所再発進行を来しサルベージ肺切除を行った症例について背景や経過を後ろ向き解析した。症例候補ならびに根治性については専門家による会議で決定した。38人がサルベージ手術を受けていた。男性26人、年齢中央値は64.5歳であった。化学放射線療法後にサルベージ手術が行われたのは23人、抗がん剤後は9人、放射線治療後は6人であった。外科手術形式は26人が肺葉切除、8人が全摘、4人が区域切除であった。完全切除(R0)は35例(92.1%)で達成され、3人に術後合併症(遷延するエアリーク、気管支胸膜瘻、感染)が見られた。30日以内の術後死亡は見られなかった。根治的な化学放射線治療など治療の向上によりサルベージ手術の機会は増えている。このような根治的治療の後のサルベージ手術は、きちんと評価された上で合併症も許容される範囲で実現可能で考えられる。
感想
外科手術以外の治療方法が進歩すると、外科治療の役割が小さくなる面と、逆に従来は切除対象にならなかったものが切除対象として見直される面があります。また「再発は全身疾患だから取っても無意味」と考えるか、「少しなので取ればいいだろう」と考えるかは科学だけでは割り切れない面もあります。今回の検討は、あくまで再発後のサルベージ手術であって、いわゆるⅢ期の化学放射線療法後切除する場合とは状況が異なります。どちらかといえばオリゴメタの扱いについての報告と思った方が良さそうです。
手術を受けた全患者に対する割合は0.51%でした。増加しつつあると書かれているのは、前半で8人、後半で30人対象患者が増加したためです。論文も増えているようです。予後は全体の5年生存率が40.6%とかなり良く、特に化学放射線療法後切除例での5年生存率41.9%で、抗がん剤治療後では33.9%でした。胸部外科医ではないので詳しいことはわかりませんが、放射線治療により瘢痕と線維化を伴った場合、解剖が変わってくるため困難を伴うようです。わずかですが遷延するエアリーク、気管支胸膜瘻、感染といった合併症が見られています。最高年齢は78歳、5リットルもの出血症例があったようです。
抗がん剤治療の進歩によりPSの保たれている患者には様々な選択肢がとれるようになりました。内科医の頭には、発見時にしか手術が浮かびません。しかし一回目の治療がうまく行き、限局された範囲での再発が見られる場合、切除という選択肢を再度思い浮かべる時かも知れません。