Daraxonrasib for Previously Treated RAS-Mutant Non-Small-Cell Lung Cancer.
Arbour KC et al.
N Engl J Med. 2026 Sep 3;395(9):882-893.
PMID:42685317.
Abs of abs,
RAS変異は、非小細胞肺癌において一般的な発癌遺伝子として知られており、約30%を占める。GTP結合型変異型および野生型RASタンパクアイソフォームに対する経口RAS(ON)多選択性三重体複合体阻害剤であるダラクソンラシブ(RMC-6236)が、RAS変異型非小細胞肺癌において安全かつ有効であるかどうかは不明である。本ダラクソンラシブに関する第I/Ⅱ相、多施設共同、用量漸増および用量拡大試験では、既治療の進行性RAS変異型非小細胞肺癌患者を登録し、21日サイクルで1日1回、10-400 mgのダラクソンラシブを経口投与した。主要評価項目は安全性であった。副次評価項目には、主治医評価の奏効率(完全奏効または部分奏効)および奏効持続期間が含まれる。2025年7月21日のデータカットオフ日時点で、登録され、300mg以下のダラクソンラシブによる治療を受けた非小細胞肺癌患者計136名について、安全性および有効性の評価が行われた。300mg以下の用量で発生した全グレードの有害事象は、患者の99%で報告され、発疹、下痢、悪心、嘔吐、粘膜炎または口内炎は、少なくとも30%の患者に発生した。グレード3以上の有害事象は患者の54%で報告され、肺炎(10%)、下痢(9%)、発疹(8%)、貧血(5%)が少なくとも5%の患者に認められ、グレード5の有害事象が4件発生した。奏効割合は、ダラクソンラシブ120mg以下の投与群で31%、160-220 mgの投与群で34%、300 mgの投与群で37%であった。治療歴のあるRAS変異陽性の転移性非小細胞肺癌患者において、1日300mg以下のダラクソンラシブを投与された患者の54%にグレード3以上の有害事象が認められ、抗腫瘍効果は30%以上あった。
感想
非常に薬が作りにくかったKRAS非G12C変異に関して光が見えてきました。ダラクソンラシブは今年のASCOで膵癌に対する効果で注目されました[O’Reilly EM NEJM2026 PMID:42223072]。この薬の作用機序として細胞内に入ると、シャペロンタンパク質CypAと二量体複合体を形成し、その表面を再構築して、活性化RAS蛋白に対して高い親和性を持つ表面を作り出します。この二量体複合体はRAS蛋白と結合し、その結果、化合物はタンパク質のシグナル結合部位を占拠してしまいます(図はCregg J J Med Chem2025 PMID:40056080.から引用しています)。図では例として破線で囲まれた部分が飛び出すことで、RAF蛋白が立体的に結合できなくなることを示しています。RAS蛋白はほとんどが活性化した状態で存在するため「活性化RAS蛋白」に作用するもの有利な点です。こうして活性化RAS蛋白への結合が阻害されることで、下流シグナルが遮断されるというメカニズムになります。しかもこのCypAとの二量体複合体が認識するのは活性化RASに共通する部分です。つまり様々なアイソフォームを認識できるため、KRAS変異全般への効果が期待できます。以前にも述べましたが第Ⅰ/Ⅱ相試験でNEJMに掲載されるということは非常に有望であるということです。結果はアブストラクトがすべてでありソトラシブと同程度効くと思われますが、今後はサブタイプ別に奏効が違うか?とソトラシブ同様、免疫療法との併用/順序が議論になってきます。また耐性機序も探索されるでしょう。これについてはすでに一報[Aronchik I Nat Med2026 PMID:42581230]があり、KRAS変異増幅が多いことが知られています。活性体が働かなくなるので、量を増やして対抗しようという原始的な手段です。したがって耐性化した場合、副作用さえ許容できれば単純に増量する戦略もあり得ます。またCypAとの二量体複合体との結合面の変化をきたす耐性化も報告されています。今後この薬も使えるようになるでしょうが、創薬の進歩のすごさを知るとともに、癌の完治がいかに難しいかを痛感させられます。