肥満とICI治療効果との関連

Immunotherapy and Overall Survival Among Patients With Advanced Non-Small Cell Lung Cancer and Obesity.

Ihara Y et al.
JAMA Netw Open. 2024 Aug 1;7(8):e2425363.
PMID:39093562

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肥満とがん治療に対する反応および生存率との関連は、様々な研究によって相反する結果が得られている。 肥満患者において、第一選択治療として従来の化学療法と免疫療法のどちらを選択するのが最適なのかは依然として不明である。今回は進行非小細胞肺癌において、BMIが免疫療法、従来療法と全生存率との関連を修飾されるかを検討した。2015年12月1日~2023年1月31日の間に、日本の先進施設から得られた入院データを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。対象は免疫チェックポイント阻害薬治療または従来の化学療法を受けた患者である。主要アウトカムは全生存期間であり、初回化学療法後3年間を追跡期間とした。進行非小細胞肺癌31257人うちICI療法を受けた患者は12816人(平均年齢70.2歳、男性10287人)、従来の化学療法を受けた患者は18441人(平均年齢70.2歳、男性14139人)であった。 BMIが28未満の患者では、ICI療法は従来の化学療法を受けた患者と比較して死亡のハザードが有意に低かった(BMI 24:ハザード比0.81[0.75-0.87])。 しかしBMI 28以上の患者ではこのような関連は認められなかった(BMI 28 ハザード比0.90[0.81-1.00])。今回の研究から、従来の化学療法とICI治療を全生存期間で比較した場合のBMIで修飾を受けることが示唆された。 過体重または肥満であってもICI治療における生存率改善は認めなかった。 このことは、ICI治療が過体重または肥満の患者にとって最適な初回治療ではない可能性を示唆しており、そのような患者では従来の化学療法の使用も考慮してもよいだろう。

感想
おそらくDPCベースの診療情報からのデータかと思います。先行研究は引用文献36[Jain A CanImmImm 2023 PMID:36383245]で、BMIが低下あるいは増加でも死亡リスクが増加し、最適BMIは30付近であるという研究です。今回の研究も免疫療法では、ハザード比がBMI 24付近が最も低く、それよりも高くても低くてもリスクが増加します。一方従来の抗がん剤では傾きこそ多少違いますが、一貫してBMI上昇とともにリスクが下がります。64歳以下で見るとこの傾向は維持されますが、65歳~79歳では抗がん剤治療と同じようにBMIが増加するほどリスクは低下します。これらの原因ははっきりしませんが、ホルモン調節、内臓脂肪、T細胞機能、樹状細胞異常など多様な関連を示す可能性があります。見かけ上は肥満に見えてもさまざまな免疫異常を秘めている可能性があり、それがICIの効果を減弱している可能性は否定できないでしょう。この手の話題は、肥満の多い外国での報告が主でした。今回取り上げたのはこれが日本人対象の報告であるためです。BMI24ですから、身長165㎝で65㎏くらいが最適で、そこから大きく逸脱するとICIの効果が下がるかもしれないといった知識は持っていても損はしません。偶然かも知れませんが、ICIで長期生存している人を思い浮かべると極端な肥満はないような気がします。