術後フォローはどうあるべきか

Chest CT scan plus x-ray versus chest x-ray for the follow-up of completely resected non-small-cell lung cancer (IFCT-0302): a multicentre, open-label,randomised, phase 3 trial.

Westeel V et al.
Lancet Oncol. 2022 Aug 11:S1470-2045
PMID:35964621.

Abs of abs.
早期の非小細胞肺癌を切除しても、再発や第2肺癌の危険性が高い状態が続く。今回は切除可能な非小細胞肺癌に対する術後の経過観察として、診察、胸部X線に加えCT、気管支鏡検査を含む場合と単に診察と胸部X線だけの場合とについて評価した。多施設共同非盲検無作為化第3相試験(IFCT-0302)として、18歳以上、病理学的Ⅰ~ⅢA期の非小細胞肺癌の完全切除例を対象とした。患者は非小細胞肺癌の手術後、CTを用いたフォローアップ(診察、胸部X線、胸腹部CT、非腺がんの場合の気管支鏡検査)と最小フォローアップ(診察と胸部X線)とに無作為に1:1で割りつけられた。最初の2年間は6ヵ月ごと、5年目までは1年ごとにフォローを行った。主要評価項目は、intention-to-treat集団における全生存とした。副次項目として、同じくintention-to-treat集団での無再発生存率も解析された。2005年1月3日から2012年11月30日の間に、1775人の患者が登録され、最小フォローアップ群に888人、CTを用いたフォローアップ群に887人が割り付けられた。全生存期間の中央値について,群間で有意差は認められなかった(最小フォロー群で8.5年[7.4-9.6],CTフォロー群で10.3年[8.1-未達],調整ハザード比0.95[0.83-1.10],p=0.49).無再発生存率も群間で有意差はなかった(中央値は、最小フォローで未達、CTフォロー群で4.9年[4.3-];調整後ハザード比1.14[0.99-1.30];p=0.063)。再発は、最小フォローで888例中246例(27.7%),CTフォローで887例中289例(32.6%)に認められた。第2肺癌は、最小フォローで27人(3.0%)、CTフォローで40人(4.5%)に見つかった。非小細胞肺癌術後に通院と胸部X線でのフォローアップに胸部CTを追加しても、生存期間の延長は見られなかった。しかし、治癒しやすい早期再発や第2肺癌をより多く発見することができる。この点で特に肺癌検診が普及している国では、他の支援策と合わせてCTによるフォローアップが支持される。

感想
術後フォローアップはどうあるべきか考えさせられる研究です。CTなど高精度の機器を使ってできるだけ介入すれば予後が伸びるか?といった研究はだいたい結果が見えており、「病気の発見は早まるが、予後は伸びない」です。今回の結果もそのままの結果が得られました。生存曲線は完全に重なっており、無再発生存期間についてはCTフォローの方が早く見つかる、つまり曲線が落ちるのが早い結果でした。人間が思うほど細かい努力が結果に結びつかないですし、まだまだ私たちは病気の前に謙虚である必要がありそうです。結論にある、肺癌検診が普及している国ではCTフォローも支持される、という内容には注意が必要です。この意味はNELSON試験[de Koning HJ NEJM2020 PMID:31995683]で高リスクに対する肺癌CT検診で死亡率が低下したということを外挿したものです。術後患者=肺癌高リスク群であることは事実ですが、重喫煙者の高リスク集団とそのまま置き換えて考えてよいかは少し疑問です。面白いことにFigureS4に肺癌死亡率の生存曲線が載っており、CTフォローでは癌特異的な生命予後は改善傾向にあるように見えます。つまりこれはCT検診で肺癌死亡が減る事象とおなじものを見ているように思えます。減らしたいのは全死亡ですのでまだまだ議論が必要なことが伺えます。リスクによる層別化ができれば一番ですが、これも補遺のFigureにサブグループ解析が行われており、病理学的Ⅰ/Ⅱ期はCTフォローの方が良さそうで、Ⅲ期は通常フォローの方に寄っています。どうにでも解釈できますが、ある程度病気が進んでいる場合は命運が決まっているとも言えます。さて今はこの試験をしていた時期と少し環境が違ってきています。これから縮小手術も進むでしょうし、新しい術後補助化学療法としてEGFR陽性例についてTKIを入れた後はどうなのか、あるいはプラチナベースの抗がん剤後に免疫療法を行った場合はフォローはどうあるべきなのかなど課題は尽きません。