Pembrolizumab versus chemotherapy for previously untreated, PD-L1-expressing, locally advanced or metastatic non-small-cell lung cancer (KEYNOTE-042): a randomised, open-label, controlled, phase 3 trial.
Mok TSK et al.
Lancet. 2019 Apr 4. [Epub ahead of print]
PMID:30955977
Abs of abs.
初回治療としてのペムブロリズマブ単独療法で、進行非小細胞肺癌かつPD-L1スコア(TPS)が50%以上の集団において、全生存期間および無増悪生存期間の改善が認められた。今回はTPS1%以上を有する患者において、ペムブロリズマブ単独療法による全生存期間を調べた。この無作為化オープンラベル第Ⅲ相試験は32カ国、213施設で行われた。適格基準は18歳以上、未治療局所進行あるいは転移性非小細胞肺癌でEGFR遺伝子変異やALK転座がなく、PS0または1でTPS1%以上あり、3ヶ月以上の生存が期待される患者である。層別化因子は登録地域(東アジアとその他)、PS(0と1)、組織型(扁平上皮癌と非扁平上皮癌)、PD-L1 TPS(50%以上と1-49%)である。登録された患者は、3週間毎、最大35サイクルまでのペムブロリズマブ 200mg投与または主治医が選択したプラチナベースの化学療法を4-6サイクルを受けた。これは層ごとに4つのブロックで1:1のランダムに割り当てられた。プライマリーエンドポイントは、TPS50%以上、20%以上、および1%以上で区切った場合の全生存期間であった(片側有意閾値、p=0.0122、p=0.0120、p=0.0124)。これらが有意であればITT集団においても評価することとした。2014年12月から2017年3月まで、1%以上のTPSを有する1274人の患者(男性902人、女性372人、年齢中央値63歳[57-69])がペムブロリズマブ(n=637)または化学療法(n=637)に割り付けられITT集団となった。599人(47%)のTPSが50%以上、818人(64%)のTPSが20%以上であった。2018年2月26日現在、追跡期間中央値は12.8か月であった。全生存期間について3つのTPS集団のすべてにおいて、化学療法群よりもペムブロリズマブ群の方が有意に長かった(50%以上ハザード比0.69[0.56-0.85]、p=0.0003、20%以上0.77[0.64-0.92]、p=0.0020、1%以上0.81[0.71-0.93]、p=0.0018)。またそれぞれのTPS集団における生存期間中央値はペンブロリズマブ対化学療法で20ヶ月[15.4-24.9]対12.2ヶ月[10.4-14.2]、17.7ヶ月[15.3 -22.1]対13ヶ月[11.6-15.3]、16.7ヶ月[13.9-19.7]対12.1ヶ月[11.3 -13.3]であった。グレード3以上の有害事象は、ペムブロリズマブ群636人のうち113人(18%)、化学療法群615人のうち252人(41%)に発生し、13人(2%)および14人(2%)が死亡した。今回の結果から、局所進行または転移性非小細胞肺癌でEGFR遺伝子変異/ALK転座陰性かつ低PD-L1の集団に対して、初回療法としてのペンブロリズマブ単独療法を拡大できることが示唆される。
感想
TPS1%以上に対してペムブロリズマブ単剤が化学療法と比べてどうかを検討した試験です。概要は各所で繰り返し語られていますので既にご存知のことでしょう。この試験結果から、TPS1%以上ならペムブロリズマブ単剤で良いと主張する向きもありますし、製薬メーカー側に立てば、そう主張したいのは当然でしょう。様々な主張ができる場合は、プライマリーエンドポイントに着目するのがセオリーです。今回のそれはTPS50%以上、20%以上、および1%以上で切った場合の全生存期間でした。これもプロトコール改定で当初の予定から変更していることにも少し注意が必要です。結果がFig2に出ています。要約ではP値が規定値以下で、すべて有意差ありの判断でした。しかし生存曲線はすべて交差しており単純には解釈できないことを示しています。交差する場合のハザード比は、仮定がすでに破綻しており数値そのものが意味を持ちません。またログランク検定でのP値を根拠にエンドポイントの判断がなされています。各種あるログランク検定の計算方法から考えて、このP値が意味を持たないとまでは言いませんが、比例ハザード性が保たれている場合と意味合いが異なっていると言えます。特に探索的とされるTPS1-49%のサブグループにおいては、12ヶ月くらいで交差し、以降はペムブロリズマブ>抗がん剤となっています。このような場合の解釈は、「治療に対する反応の異なる群が混在している」であり層別化因子として用いた登録地域、PS、組織型、TPS以外にも治療利益に関わる因子が存在することを意味します。これまで生存曲線が交差する臨床試験はいくつもありましたが、そのたびに解釈が議論されています。前述のTPS1-24%に関しては、1年以上生存できそうならペムブロリズマブ単剤がいいでしょうとしか言えません。これも治療開始時には決して知りえないことを基にした判断で、結果論に過ぎず使えません。臨床試験内においてはランダム化で解決されているはずであるからです。毒性についてですが、any gradeの肺臓炎がペムブロリズマブ単剤で8%は見逃せません。総合してプラチナベースの抗がん剤と比較して軽いと結論するのは違うような気がします。したがって私はTPS1%以上であればペムブロリズマブ単剤を無条件に考慮するという考え方には賛同しかねます。本論文では、TPS高発現に対する初回治療としてのペムブロリズマブ単剤が確定したと述べていますが、低発現の集団については”reasonable treatment option”と書かれています。くどいようですが、あくまでプラチナベースもできる人へのoptionであって、何らかの理由で抗がん剤ができない人へのoptionとなりうるかは別に議論する必要があります。