Comparative study of EGFR mutations detected in malignant pleural effusion, plasma and tumor tissue in patients with adenocarcinoma of the lung.
Wang S et al.
Lung Cancer. 2019 Sep;135:116-122.
PMID:31446983
Abs of abs.
悪性胸水(MPE)のEGFR遺伝子変異を決定する資料としての有用性は未知である。今回はMPEと血漿、組織をEGFR遺伝子変異の解析に使用する場合の比較を行った。295例のMPEサンプルを後ろ向き解析を行った。合致する組織、血漿検体は92名で入手でき、248人は血漿サンプルを有していた。del19とL858Rは高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)にて解析した。EGFR変異とそれぞれの検体の一致率を調べ、EGFR-TKIの効果とMPEでの変異検出の価値について考察した。MPEからのEGFR遺伝子変異陽性は39.3%(116/295)であった。MPEと組織の一致率は87.1%、EGFR遺伝子変異に対するMPEの感度特異度は、それぞれ71.4%、96.5%であった。219人のEGFR-TKI治療された患者において、MPEで陽性の奏効率が57.6%、組織または血漿が47.4%と同等であった。無増悪生存期間についても同等の成績で、8.9ヶ月対9.0ヶ月対7.7ヶ月、P=0.077で、全生存期間についても29.8ヶ月対25.9ヶ月対25.3ヶ月、P=0.33であった。MPEはEGFR遺伝子変異測定において、腫瘍検体に代わる信頼できる検体である。組織と血漿が利用できる場合でも、進行肺腺癌患者においてEGFR-TKI治療決定に際しての、EGFR遺伝子変異判定が可能と思われる。
感想
胸水検体、腫瘍そのものの検体、血漿検体の整合性を見た研究です。前向きではなく、後ろ向きの寄せ集めで、しかも期間は2007-2014年とかなり幅があります。また使われているのもゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブで一世代前の治療です。それでも胸水からEGFR遺伝子変異陽性が分かればそれでよいことが知られますし、また胸水からでなくても、組織検体から出る症例が3割(10/35)ほどあることなど知っておきたい情報があります。日本でするならば、胸水、腫瘍そのものからの検体が得られるものをエントリーし、前向きにやらないと意味がないと言われそうな研究ですが、この手の研究は検体輸送の問題、結果返却の問題など以外に大変です。特に胸水は悪性細胞が含まれているかを確認せねばならず、手間がかかります。結局このような後ろ向き研究が限界なわけです。本文中の生存曲線を見ると、有意差はないとは言え、血漿での陽性例がPFS、OSともあまりよくなく、既報と合致します。これまで大量胸水ではあまり効かない症例があると思っていましたが、全体で見るとそうでもなさそうです。それとは別に非喫煙者で、胸水からEGFR遺伝子変異が出ない症例では、組織が取れれば出し直してみるのも大切ではないかと考えられます。