HER2変異陽性に対する初回ゾンゲルチニブ

First-Line Zongertinib in Advanced HER2-Mutant Non-Small-Cell Lung Cancer.

Heymach JV et al.
N Engl J Med. 2026 Apr 30;394(17):1675-1684.
PMID:41985129.

Abs of abs,
最近までHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する初回分子標的治療は存在しなかった。ゾンゲルチニブは、野生型EGFRには作用せず、HER2を選択的に阻害する経口不可逆TKIであり、それによって関連する毒性を最小限に抑えることができる。進行転移性非扁平上皮HER2遺伝子変異陽性肺癌を対象に、ゾンゲルチニブを評価するための第Ia/Ib相多コホート試験を実施した。今回は未治療患者(コホート2)を対象に、1日1回120mgのでゾンゲルチニブを評価した。主要評価項目は、独立判定による奏効率であった。副次評価項目には、奏効期間および無増悪生存期間が含まれた。さらに、活動性脳転移を有する患者(探索的コホート4)においてもゾンゲルチニブを評価した。コホート2では、未治療患者計74例にゾンゲルチニブ120mgが投与された。2025年8月21日時点で、奏効が確認された患者の割合は76%[65-84]であった; 奏効期間中央値は15.2ヶ月[9.8-評価不能]、無増悪生存期間の中央値は14.4ヶ月[11.1-評価不能]であった。全グレードの有害事象は73例(99%)に認められ、そのうちグレード3以上は33例(45%)であった。治療関連有害事象は67例(91%)に認められ、そのうちグレード3以上は14例(19%)であった。コホート4では、活動性脳転移を有する計30名の患者が120 mgのゾンゲルチニブを投与された。このうち、47%[30-64]に頭蓋内奏効が確認された。このコホートでは、グレード3以上の治療関連有害事象が5例(17%)に認められた。本試験によりゾンゲルチニブは、未治療の進行転移性HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺癌において持続的な有効性を示した。治療関連有害事象は軽度なものが多かった。

感想
HER2変異は2〜4%に見られると言われています。体感的にはそうですが、これだけ少ないと施設によって症例数に格差がありそうです。これまでは既治療例に対してT-DXdのみが承認された薬剤であり、間質性肺疾患の頻度の高さやその他の毒性もあることから、治療経験はあまり蓄積されていません。そこへゾンゲルチニブの一次治療データが公表されました。ORR 76%、PFS中央値14.4ヶ月はEGFR変異陽性に対する初回オシメルチニブに近い印象です。有害事象も下痢(55%)、発疹(24%)、ALT上昇(18%)、味覚障害(18%)であり、肺臓炎は74例中2例(2.7%)と許容範囲内と言えます。実地臨床で使用するにはアファチニブ並みの下痢対策が必要になりそうです。
今回特筆すべきは、「活動性」脳転移患者を評価する探索的コホート(コホート4)が設けられたことです。活動性脳転移例は通常の臨床試験から除外されることが多く、局所療法を先行させるかTKIを先に使うかという議論が付きまとう領域です。そのような症例においても頭蓋内奏効率47%という結果は、まずTKIで治療を進める方針を支持できる数字と考えます。
現在、対照レジメンをプラチナ製剤+ペメトレキセド+ペムブロリズマブとした第3相Beamion LUNG-2試験が進行中です。個人的には、今回のデータで十分説得力があり、この第3相試験を待たずに一次治療としての早期承認を期待したいところです。