L858Rにラムシルマブ+エルロチニブが効きやすい理由

Mutation-Specific Response to Ramucirumab in EGFR-Mutated Metastatic NSCLC: Insights From Circulating Cell-Free DNA Profiling (Liquid Biopsy Japan Addendum of RELAY Phase 3 Randomized Study)

Nishio K, et al.
JTO Clin Res Rep. 2026;7:100963.
PMID:

Abs of abs,
RELAY第3相試験の液体生検追加解析における以前の分析では、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌において、ラムシルマブ+エルロチニブ群は、プラセボ+ERL群と比較して、EGFR活性化変異のアレル数が減少、総細胞遊離DNA(cfDNA)濃度が上昇、cfDNA断片サイズが短縮していた。今回はEGFRサブタイプ別の最新データを報告する。患者は1:1の割合でRAM+ERL群またはPL+ERL群に無作為に割り付けられた。液体生検検体は、ベースライン時、治療中、および進行後30日目のフォローアップ時に採取された。有効なベースライン検体を有する患者(N=131)を対象に、EGFRサブグループ(19del、L858R)ごとに、EGFR活性化変異のアレル数、血漿中cfDNA濃度、cfDNA断片サイズ、治療中に生じたT790M変異を解析した。EGFR活性化変異アリル数は19del・L858R両サブグループで治療サイクル4までに減少し、治療中断後30日には再上昇した(両治療群で同様)。19delおよびL858Rの各サブグループにおいて、両治療群とも、EGFR活性化変異のアレル数がベースラインから第4サイクルにかけて減少した。総cfDNA濃度はベースラインから第4サイクルにかけて有意に増加し(p<0.0001)、L858Rサブグループ内のRAM+ERL群においてのみ、追跡調査時までその状態が維持された。両サブグループ内のRAM+ERL群において、cfDNA断片サイズはベースラインから第4サイクルにかけて減少した。19delサブグループにおいて、サイクル155以下までのT790M発生率は、RAM+ERL群で22.2%(18例中4例)、PL+ERL群で52.9%(17例中9例)であった。サイクル176以下までのT790M発生率は、それぞれ31.8%(22例中7例)および18.8%(16例中3例)であった。L858Rサブグループにおいて、サイクル数176以下ではそれぞれ31.8%(22例中7例)および18.8%(16例中3例)であった。本更新解析により、19delとL858Rの間で、総cfDNA濃度およびT790M変異率に差異が認められた。RAM+ERLはL858Rに対してより強い抗腫瘍効果を示す可能性があり、これはL858R患者において以前に観察された良好な生存利益を支持するものである。

感想
RELAY試験のRAM+ERL群が日本人サブセットのL858Rにおいて良好な結果を示したことはよく知られています。ただしあくまでもサブセットのサブセットであり、エビデンスとしては研究仮説の域を出ません。本論文はその生物学的背景を液体生検で探ろうとしたものです。
理屈としては、cfDNA濃度がL858RのRAM+ERL群で一貫して上昇していることをアポトーシス亢進の根拠とし、さらに実験的にL858R細胞株ではVEGFR2のmRNA発現量が高いことをRAMの効果が出やすい根拠としています。RAMによって腫瘍内へのERL到達濃度が上昇し、感受性のある癌細胞の排除が進むことで耐性クローンが相対的に優位になる。これがL858R群でT790M出現率が高くなったことと関連するとしています。
ただしcfDNA総量の増加を「抗腫瘍効果の証拠」とする解釈はまだ確立していません。cfDNA濃度が上昇する原因はアポトーシス以外にも、腫瘍壊死、血管透過性の変化、腎クリアランスの変動など複数考えられます。特にRAMはVEGFR-2を直接標的としており、血管透過性への直接効果でcfDNA濃度が変わる可能性を完全には除外できません。cfDNAフラグメントサイズの短縮をアポトーシスの傍証として挙げている点も、アポトーシスと「矛盾しない」所見ではありますが、壊死後のDNase二次分解や測定値の変化がわずか約3 bp(173→170 bp)であることを考えると、根拠としてはやや弱い印象です。
日常臨床の感触から言うと、TKI感受性は平均すると19delとそれほど変わらないように見えますが、L858Rは個体差が大きいと感じています。TKIで数年にわたって効果が持続する人もいれば、ほとんど効かない人もいます。おそらくTP53などの共存変異の影響が大きいのではないかと思っています。L858Rについてはやってみないとわからないことが多く、どのTKIを選択するかも大事ですが、TKIにこだわらずさまざまな治療を順に試していく姿勢が重要ではないかと感じています