IMpower 150のEGFR遺伝子変異陽性群についてのupdate

IMpower150 Final Exploratory Analyses for Atezolizumab Plus Bevacizumab and Chemotherapy in Key NSCLC Patient Subgroups With EGFR Mutations or Metastases in the Liver or Brain.

Nogami N et al,
J Thorac Oncol. 2022 Feb;17(2):309-323.
PMID:34626838.

Abs of abs,
IMpower150試験(NCT02366143)では、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(ABCP)またはアテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(ACP)とベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(BCP)を比較した。そこではEGFR遺伝子変異および肝/脳転移のサブグループについての全生存期間(OS)解析が行われた。化学療法未実施の転移性非扁平上皮NSCLC患者1202人(intention-to-treat集団)をABCP、ACP、またはBCPに無作為に割り付けた。治療後安定した脳転移は許容された。OSはEGFR遺伝子変異と登録時の肝転移有りのサブグループで評価し、新たな脳転移の発生率と発生までの時間はITT集団で評価した。データカットオフ時(2019/9/13、追跡期間中央値39.3カ月)BCPに対しABCPでOS改善が維持されたのは、EGFR遺伝子感受性変異(全体HR=0.60[0.31-1.14]、TKI既使用例:HR=0.74[0.38-1.46])、肝転移例(HR=0.68[0.45-1.02])であった。ACPはBCPに対して生存ベネフィットを有していなかった(全体HR=1.0[0.57-1.74]; TKI既使用HR=1.22[0.68-2.22]) 肝転移 (HR=1.01[0.68-1.51])。全体では、100人(8.3%)の患者が新たに脳転移を発症した。正式な評価ではないが、ABCPはBCPと比較して、発症までの時間を遅らせる効果が認められた(HR=0.68[0.39-1.19])。今回の探索的解析により、解釈に注意を要するもののTKI既治療を含むEGFR遺伝子変異、および肝転移有りにおいて、ABCPはBCPに対して生存利益を示した。ABCPについて脳病変の発生を遅らせるかついては、さらなる研究が必要である。

感想
IMpower150での関心度の高い所のアップデート報告になります。この部分についてはすでに本試験でのサブ解析として報告されています[Reck M LancetRepMed2019 PMID:30922878]。その報告ではBCPに対しABCPのEGFR遺伝子感受性変異においてハザード比0.31[0.11-0.83]をもってOS改善としていますので、追跡期間を長くしたら差が縮まったことが見て取れます。統計学的には元々このサブグループについてはαを当てておらず、今回含めあくまでも探索的解析ということで決着されます(つまり当てにしてはならないデータということ)。しかし私が見る限りEGFR遺伝子変異例に対するABCP療法の存在は大きく強調されています。したがって今回のデータに関してはよく理解しておく必要があります。一般に症例数をある時点で区切って、追加の度に繰り返し評価することは推奨されません。しかし生存データについては成熟データの方が信頼度が高いことは言うまでもありません。今回のデータで見るべき点は図1CでTKI治療歴のあるEGFR遺伝子感受性変異例のABCP対BCPの生存曲線です。全体としてABCPが上を行っておりアテゾリズマブを上乗せすることで、少しは良さそうに見えます。ACP対BCPは重なっていることから、利益を得るためにはベバシズマブ、アテゾリズマブ両方を入れることが必要に見えます。またいわゆるtail plateauですが、今回の生存曲線すべてについて24ヶ月以降のnumber at riskの数は群間差がほとんどなく今後は期待薄です。個人的にはtail plateauがなさそうな事の方が残念に思います。