IMpower131:良いところはないのか

Atezolizumab in Combination With Carboplatin and Nab-Paclitaxel in Advanced Squamous NSCLC (IMpower131): Results From a Randomize Phase III Trial.

Jotte R et al.
J Thorac Oncol. 2020 Apr 14:S1556-0864(20)30292-6. Epub ahead of print.
PMID:32302702.

Abs of abs.
殺細胞性抗がん剤には免疫調節作用があり、アテゾリズマブと化学療法を併用することの根拠となっている。今回は無作為化第Ⅲ相試験であるIMpower131試験を行い、IV期扁平上皮癌を対象としてアテゾリズマブとプラチナ製剤を用いた化学療法の併用を評価した。1021名の患者が均等にアテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(A+CP)(n=338)、アテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル(A+CnP)(n=343)、カルボプラチン+nab-パクリタキセル(CnP)(n=340)をそれぞれ21日間のサイクルで4回または6回投与する治療に無作為に割り付けられた。A+CPまたはA+CnP群に無作為に割り付けられた患者は、病勢進行または臨床的有用性が無くなったと判断されるまでアテゾリズマブの維持療法を受けている。プライマリーエンドポイントは、ITT集団における無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)であった。副次項目として、PD-L1別のPFSとOS、安全性とした。今回はA+CnP対CnPにおけるPFSと最終OSの報告である。ITT集団におけるA+CnPとCnPの比較でPFSの改善が認められた(6.3ヶ月対5.6ヶ月;ハザード比0.71[0.60-0.85];p=0.0001)。ITT集団におけるOS中央値は、A+CnP群で14.2ヶ月、CnP群で13.5ヶ月(ハザード比0.88[0.73-1.05]、p=0.16)であり有意差には達しなかった。事前設定された解析ではないが、PD-L1高発現のサブグループにおけるA+CnP群とCnP群比較におけるOSの改善が見られた(ハザード比0.48[0.29-0.81])。グレード3、4の治療関連有害事象および重篤な有害事象は、それぞれ68.0%と47.9%(A+CnP)、57.5%と28.7%(CnP)で見られた。本研究からプラチナベースの化学療法にアテゾリズマブを追加することで、初回治療の扁平上皮癌患者のPFSは有意に改善したが、全生存期間は同等であった。

感想
PFSの有意水準は0.006、OSは0.044に割り振られ、PFS達成、OSは全く届かずという結果でした。目標が達成されなかったためか、PFSは2018年のASCOでの発表されていましたが、OSとともに論文化されました。
Negative trialですので少し切り口を変えてみます。複合免疫療法でtail plateauを得たいとします。KN407の最終解析のOSを見ると27-30ヶ月でplateauに達し、24ヶ月生存割合は37.5%でした(ケモは30.6%)[Paz-Ares L JTO2020 PMID:32599071]。一方本試験では、24ヶ月生存割合は32.5%でした(ケモは26.6%)。ケモ→免疫の上乗せが+6%程度で共通しているのは興味深いところです。
今回は苦し紛れにPD-L1高発現(TC3またはIC3)について解析し、ハザード比0.48であったと述べています。この集団は全体の13.7%でしかありません。一方KN407ではPD-L1>=50%が26.3%で、このあたりの差も全体に影響を与えているかも知れません。毒性についてもKN407試験でのなんらかの治療中止23.4%、レジメンによる治療関連死3.6%、本試験ではそれぞれ26.5%、2.7%であり、なかなか良いところがありません。
生存曲線は小細胞がん対象のIMpower133や4剤のIMpower150でも、今回と同じく途中まで重なり後で開きます。ただしIMpower130(CBDCA+nab-PAC+atezolizumab)だけは初めの方から開いています。私見ですがペムブロリズマブに比べて、アテゾリズマブはirAEが軽度な印象があり臨床試験結果だけで捨ててしまうのは惜しい薬です。純粋にPD-1抗体とPD-L1抗体との差だけではなく、組み合わせる薬との相性や、隠れた因子がないかどうかも、もう少し見ていく必要がありそうに思っています。