Pembrolizumab versus placebo as adjuvant therapy for completely resected stage IB-ⅢA non-small-cell lung cancer (PEARLS/KEYNOTE-091): an interim analysis of a randomised, triple-blind, phase 3 trial.
O’Brien M et al.
Lancet Oncol. 2022 Sep9 Epub ahead of print.
PMID:36108662.
Abs of abs.
ペムブロリズマブは進行非小細胞肺癌に対する標準治療である。今回は完全切除されたIB-ⅢA期に対する術後補助化学療法としてペムブロリズマブを評価した。無作為化三重盲検第3相試験(PEARLS/KEYNOTE-091)として行われ、29カ国196医療機関で行われた。対象は18歳以上、完全切除された病理学的病期IB(腫瘍径4cm以上)、Ⅱ期、ⅢAの非小細胞肺癌で、組織型やPD-L1発現は問わない、PS0か1である患者とした。各国のガイドラインに従ってIB期には補助化学療法が考慮され、Ⅱ/ⅢA期には強く推奨された。層別化因子は病期、術後補助化学療法の有無、PD-L1発現、地域であり、ペムブロリズマブ200mgまたはプラセボにランダムに割り付けられた(最大18サイクル、3週間毎)。患者、主治医、解析担当者には、治療割り付けがマスクされている。主要評価項目は2つ設けられ、全体とTPS50%以上における無再発生存率である。有効性はITT集団を対象に評価され、安全性は少なくとも1回の試験治療を受けたすべての患者を対象に評価された。2016年1月20日~2020年5月6日の間に、スクリーニングされた1955人のうち1177人(60%)がペムブロリズマブ(n=590、うちTPS50%以上168人)またはプラセボ(n=587、うちTPS50%以上165人)にランダムに割りつけられITT集団となった。今回の中間解析のデータカットオフ(2021年9月20日)時点の追跡期間中央値は35.6ヶ月[27.1-45.5]であった。全集団において、無再発生存期間中央値はペムブロリズマブ群53.6カ月[39.2~未達]、プラセボ群42.0カ月[31-3~未達]であった(ハザード比0.76[0.63-0.91]、p=0.0014)。TPS50%以上では、無再発生存期間中央値はペムブロリズマブ群[44.3~到達]、プラセボ群[35.8~到達]、ハザード比0.82[0.57-1.18]、p=0.14)とも到達しなかった。グレード3以上の有害事象は、ペムブロリズマブ投与を受けた580人中198人(34%)、プラセボ投与を受けた581人中150人(26%)に発現した。10名以上に発生したグレード3以上の事象は、ペムブロリズマブでは高血圧(35[6%])および肺炎(12[2%])、プラセボでは高血圧(32[6%])であった。重篤な有害事象は、ペムブロリズマブ群142人(24%)、プラセボ群90人(15%)に発生し、1%以上に発生した重篤な有害事象は、ペムブロリズマブでは肺炎(13[2%])、肺臓炎(12[2%])、下痢(7[1%])、プラセボでは肺炎(9[2%])であった。治療関連の有害事象により死亡したのは、ペムブロリズマブ投与群では4人(1%)(心原性ショックと心筋炎の両方によるもの1人、敗血症性ショックと心筋炎の両方によるもの1人、肺炎によるもの1人、突然死によるもの1人)、プラセボ投与群では0人であった。ペムブロリズマブは、完全切除されたPD-L1発現によらないのIB-ⅢA期非小細胞肺癌において、プラセボと比較して無再発生存期間を有意に改善し、新たな安全性に関する情報はなかった。ペムブロリズマブは、完全切除後、術後補助化学療法を考慮後のIB-ⅢA期の非小細胞肺癌に対する新しい治療選択肢となる可能性がある。
感想
前提としてPD-L1statusに関わらず登録可能、EGFR/ALKは各国の事情に応じて測定されている点、プラセボコントロールである点を押さえておきましょう。統計設定を見てみます。片側0.025を有意水準とし、全体集団のDFSに0.0125、それが有意ならTPS>50%のDFSに0.0125の割り振りをしています。全体集団のDFS中央値をペムブロリズマブ56ヶ月、プラセボ42ヶ月と推定し、ハザード比0.75、検出力86%としています。中間解析ではありますが、結果はペムブロリズマブ群53.6カ月、プラセボ群42.0カ月でハザード比0.76と恐ろしいくらい当たっています。ただしTPS50%以上ではハザード比0.55を見込んでいましたが、現在のところ0.82とあまりよくありません。
IMpower010試験との相違はいろいろな場で議論されると思います。IMpower010は非盲検、PD-L1陽性(1%以上)が対象である点には注意が必要です。共通して見えることは術後補助化学療法をしてからの話であること、意外なことにEGFR遺伝子変異陽性でも利益があること、PD-L1低発現では利益が無さそうということです。これらを見ていくと、最初から切除不能例と術後では、私たちが思うより環境が大きく異なっていると考えさせられます。特に今回のPD-L1≥50%が思ったほど良くなかったことは、IMpower010ではそうでなかったことから今後議論を呼びそうです。データ通りにPD-L1≥50%ならアテゾリズマブを使うといった解釈は、メーカー主催の講演会だけでしょう。これまでの知見からPD-L1≥50%では差が開きそうに思いますがそうではならなかった、この差が偶然なのか、何かの未知の因子によるものかこれから出される基礎、実地のデータに基づいて判断してかねばなりません。エビデンスの質からするとプラセボ対照が置かれている今回の試験の方がIMpower010よりベターであり、統計見込みもきちんと当たっている(つまりプラセボ群が極端に悪くない)ことから重要度が少し高いと思い最終解析の結果も注目したいと思います。