KRAS変異陽性と免疫療法

KRAS-mutant advanced NSCLC: efficacy and clinical outcomes from network meta-analysis and real-world evidence.

Gang X et al.
Lung Cancer. 2026 Jan 12;Epub ahead of print.
PMID:41544598.

Abs of abs,
KRAS変異は非小細胞肺癌でよく見られるドライバー変異である。幅広く有効な標的治療薬がなく異質性が大きいため、KRAS変異に対する最適な治療は依然として不明である。本研究ではネットワークメタ解析と実地データを組み合わせ治療計画の情報を提供する。KRAS変異およびKRAS G12C変異における治療レジメン間の有効性アウトカムを比較するため、13件のランダム化比較試験をベイジアンネットワークメタ解析に組み入れた。並行して、当施設で治療を受けた進行性KRAS変異の実臨床データを分析した。KRASおよびG12Cのネットワークメタ解析全体において、免疫療法ベースのレジメンは化学療法ベースのレジメンを概して上回った。PD-(L)1阻害剤単剤療法は全生存期間で最高位となり、化学療法+PD-(L)1阻害剤および血管新生阻害薬は無増悪生存期間で最高位となった。化学療法+二重免疫チェックポイント阻害(PD-(L)1およびCTLA-4)は、PFSよりもOSにおいてより大きな改善をもたらした。実地データでは、初回治療としてのPD-(L)1単剤療法が最良の成績(奏効率:88.9%;PFS中央値:22.2ヶ月)を達成し、次いで化学療法+PD-(L)1±抗VEGF療法が続いた。多変量解析では、PS0-1、PD-L1 TPS≥50%、TMB≥10mut/Mb、および化学療法+PD-(L)1±抗VEGF療法が、初回治療におけるPFS延長と独立して関連していた。その後の治療では、G12C阻害剤が他の治療法と比較して有意に成績を改善した一方、非G12C変異疾患では既存戦略による利益は限定的であった。免疫療法はKRAS変異の1次治療の基本である。この枠組みにおいて、PD-(L)1単剤療法はPD-L1高発現の厳密に選択された患者に適応となり得る一方、化学免疫療法はより広範なサブグループに利益を拡大できる。抗VEGFまたは抗CTLA-4剤による治療強化は臨床的に有望であり、バイオマーカーに基づく前向き評価が求められる。KRAS G12C変異阻害剤は後の方で有効であるが、G12C以外の治療選択肢は依然として限られている。

感想
KRAS変異は欧米に多く、アジア系には少なく予後不良因子の一つとされています。遺伝子パネル検査の普及によりKRAS変異に触れる機会も多くなっています。私の目にしている実地臨床では、G12C変異以外も含めてKRASは特に少ないということはなく、ありふれているという印象です。EGFR/ALKなど他のドライバー変異を持つ肺癌に比べたら免疫療法の奏効率が上回っていたとの報告[Mazieres J AnnOncol2019 PMID:31125062]が初期に出ており、これで免疫療法が効きやすいと印象付けらていますが、そもそも効きやすいと言えるかも難しいと思います。一因としてKRASにはさまざま変異が併存し、それが効果に強く影響しているようです。また組織学的には粘液産生型が特に良くないとの報告があり[Di Federico A AnnOncol2025 PMID:39637943]、実地でもこの報告どおりと感じています。
さて今回はネットワークメタ解析が行われています。端的にいうと異なる試験の試験治療群を(共通である)対照群との差分で比較するというものです。Rではパッケージgemtcで実装されています。Fig1にG12Cも含めたKRAS変異のメタ解析、Fig2にはG12Cのメタ解析が載せられています。G12C陽性ではPD-L1阻害薬単剤の成績が良く見えますが、PD-L1発現により選択バイアスがかかっていることに注意が必要です。KRAS全体では化学療法への免疫療法の上乗せでハザードが下がり、さらにCTLA-4やVEGF追加も有望に見えます。裏を返せばKRAS変異では化学療法+PD-(L)1阻害薬のみでは対応が難しいことになります。この話はPOSEIDON試験の5年フォローアップ[Peters S JTO2024 PMID:39243945]が報告され、その中でKEAP1とSTK11併存例に対する免疫2剤の有効性が見られたこととつながります。KEAP1とSTK11がKRAS変異と併存すると、特に予後不良になりえる[Ricciuti B JTO2021 PMID:34740862]という話もベースにおく必要があります。したがってKRAS変異に対する免疫療法を語るときは、PD-L1発現以外に併存する遺伝子変異にも十分注意して見ていかないと目線が合いません。ただすべてを測定しておくことは難しいでしょう。そこで本論文の結論で述べられている”drug escalation strategies”、つまり効かなければ足していく戦略が、保険の問題を別にすればKRAS変異に対する現実解かも知れません。