LAURA試験でのオシメルチニブの中枢神経系再発への抑制効果

Osimertinib after definitive chemoradiotherapy in unresectable stageⅢ epidermal growth factor receptor-mutated non-small-cell lung cancer: analyses of central nervous system efficacy and distant progression from the phase Ⅲ LAURA study.

Lu S et al.
Ann Oncol. 2024 Dec;35(12):1116-1125.
PMID:39289145.

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非小細胞肺癌の遠隔転移は予後不良因子であり、QOLに悪影響を及ぼす。 中枢神経系(CNS)は、EGFR遺伝子変異陽性肺癌における遠隔転移の一般的な部位である。 オシメルチニブは、術後補助療法として推奨される第3世代のEGFR-TKIである。 LAURA試験では、オシメルチニブは、切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌で化学放射線療法後に進行のない症例において、PFSに有意に改善した。今回は 中枢神経系に対する有効性および死亡または遠隔転移までの期間(TTDM)の解析結果を報告する。プラチナ製剤を用いた根治的化学放射線療法を行った患者に対し、中央判定での進行または中止までオシメルチニブ(80mg/日)あるいはプラセボを投与する群に2:1で無作為に割り付けた。 主解析はは中央判定のPFSであったが、今回は神経放射線科医による中央判定による中枢神経系PFSとTTDMが評価項目である。 216人の患者が無作為に割り付けられた(オシメルチニブ143人、プラセボ73人)。 中央判定による中枢神経系PFS中央値は、オシメルチニブ14.9ヵ月[NC-NC]に対してプラセボ14.9ヵ月[7.4-NC]、ハザード比0.17[0.09-0.32]であった。 主治医評価によるCNS PFS解析は中央判定と一致していた。 12ヵ月時点でのCNS進行の累積発生率は、オシメルチニブで9%[5-14]、プラセボで36%[24-47]であった。 TTDMのハザード比0.21[0.11-0.38]であった。 12ヵ月後の遠隔転移の累積発生率は、オシメルチニブで11%[6~17]、プラセボで37%[26~48]であった。オシメルチニブはプラセボに対して中枢神経系PFSおよびTTDMにおいて臨床的に意味のある改善を示した。このことは、切除不能Ⅲ期EGFR遺伝子変異陽性肺癌おけるCRT後の標準治療としてオシメルチニブ投与を支持する内容である。

感想
LAURA試験[Lu S NEJM2024 PMID:38828946]は、EGFR遺伝子変異陽性例に対するCRT後の地固めとしてのオシメルチニブを投与する試験です。対プラセボでPFS中央値39.1か月対5.6か月、ハザード比0.16と大差を示しています。一方術後補助としてのADAURA試験[Wu YL NEJM2020 PMID:32955177]ではPFSハザード比0.20、中枢神経系PFS0.18と報告されています。もとより進行再発例でのオシメルチニブの高い中枢神経系活性は知られているところであり、より悪性度の低い局所進行例で、その力はさらに発揮されると考えることもできるかも知れません。今回の結果のCNS-PFSハザード比は0.17と、わずかではありますがこれまでで最も強い結果となっています。脳以外に先に再発すれば、CNSリスクの評価は難しくなります。これらを解決するのが競合リスク解析ですが、これだけ差があるとテクニカルな問題になりません。LAURA試験でのオシメルチニブ投与は36ヶ月ですが、CNS-PFSでも39ヶ月付近にKM曲線が急に落ちているところが気になります。これらの人は確実にオシメルチニブが効いていた人で、投与期間が3年では足りないと言えます。逆にもっと短期間でもよい人たちもいるのかも知れません。今や局所進行、術後のEGFR遺伝子変異陽性例にオシメルチニブ投与を疑う余地はなく、リスクを層別化し、最適治療期間を設定することを議論する時代になったと感じます。