PD-1とVEGFを標的とする二重抗体と扁平上皮癌

Ivonescimab plus chemotherapy versus tislelizumab plus chemotherapy in advanced squamous non-small-cell lung cancer (HARMONi-6):interim overall survival analysis of a randomised, double-blind, phase 3 trial in China.

Lu S et al.
Lancet. 2026 May 31:Epub ahead of print.
PMID:42218899.

Abs of abs,
PD-1とVEGFを標的とする二重特異性抗体は、非小細胞肺癌において有望な有効性を示している。前回報告したHARMONi-6試験では、進行性扁平上皮非小細胞肺癌に対する初回治療として、イボネシマブ+化学療法とチスレリズマブ+化学療法の有効性および安全性を評価することを目的とし、イボネシマブと化学療法の併用で無増悪生存期間を有意に延長した。今回は事前規定の中間解析による全生存期間の結果について報告する。HARMONi-6は、中国全土の50の病院で実施された二重盲検無作為化第3相試験である。対象は、未治療、切除不能なⅢB期、ⅢC期、Ⅳ期の扁平上皮非小細胞肺癌であり、PS0/1の18~75歳の患者であった。適格患者は1:1の比率で無作為に割り付けられ、4サイクルのカルボプラチン+パクリタキセルに加えイボネシマブまたはチスレリズマブ投与を受け、その後、維持療法としてイボネシマブまたはチスレリズマブの単剤投与を受け毒性や病勢進行、最大24か月まで継続された。主要評価項目は、独立判定の無増悪生存期間であった。全生存期間は主要な副次評価項目であり、全生存期間イベントが約225件観察された時点で中間解析を行う予定であったが、規制当局の期限に間に合わせるため、全生存期間イベントが204件発生した時点で中間解析が実施された。安全性については、割り当てられた試験治療を少なくとも1回投与されたすべての患者を対象に解析された。現在患者登録は完了し、治療および追跡調査が継続中である。2023年8月17日から2025年1月21日にかけて、761名の患者が適格性評価を受け、229名の除外後、計532名の患者が無作為に割り付けられた(各群266名)。患者のうち494名(93%)が男性、38名(7%)が女性であった。年齢の中央値は64歳(59-69)であった。データカットオフ日(2026年2月27日)時点で、204例の死亡が確認された。内訳は、イボネシマブ+化学療法群で84例(32%)、チスレリズマブ+化学療法群で120例(45%)であった。追跡期間中央値は21.4ヶ月[20. 27-21.91]で、イボネシマブ群の全生存期間の中央値は27.9ヶ月([27.89-NE]であったのに対し、チスレリズマブ群では23.7ヶ月[20.11-NE]であった(ハザード比0.66[0.50-0.87];片側p=0.0017、事前既定の判定値p<0·0049を達成した)。イボネシマブと化学療法の併用による全生存期間の延長効果は、主要なサブグループ間で一貫していた。グレード3以上の治療関連有害事象は、イボネシマブ群の266例中184例(69%)、チスレリズマブ群の265例中156例(59%)に発生した。グレード3以上の出血の発生率は、それぞれ266例中7例(3%)および265例中2例(1%)であった。未治療の進行性扁平上皮非小細胞肺癌において、イボネシマブと化学療法の併用療法は、チスレリズマブと化学療法の併用療法と比較して、全生存期間において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。このレジメンは、この患者群における第一選択治療として、新たな治療選択肢となり得る。

感想
今年のASCOでの注目演題の一つです。プライマリーエンドポイントである無増悪生存期間については昨年報告されており11.1ヵ月対6.9ヵ月(ハザード比0.60[0.46-0.78];P<0.0001)で達成されています[Chen Z Lancet2025 PMID:41125109]。またチスレリズマブはペムブロリズマブ類似薬であるため、そもそもKEYNOTE-407と似た研究があるかどうか気になる人もいるでしょう。それはRATIONALE 307試験[Wang J JAMAOncol2021 PMID:33792623][Wang J ESMO Open2024 PMID:39461775]として報告され、パクリタキセルとナブパクリタキセルを分けて解析しているので面倒ですが、OSハザード比が0.68と0.75であり、KN407のそれが0.71なのでほぼ同等であると言えます。現在進行中の試験(HARMONi-3)で正式にペムブロリズマブとの比較が明らかにされるでしょう。今回のイボネシマブはPD-1とVEGFの二重特異性抗体です。”cooperative binding design”で1つの四価分子の中でPD-1とVEGFを同時に遮断する、腫瘍局所での結合親和性が強化される、一方で全身のVEGF阻害は最小化されるため、出血などの毒性リスクを低減できるとしています。薬剤的にはIMpower150と似た構成ですが、これは非扁平上皮癌対象なので比較はできません。今回OS中央値にして4か月延長、ハザード比0.66であり進歩ですが、従来の血管新生阻害薬同様出血、高血圧、タンパク尿には注意が必要です。また空洞性病変のある症例の17%に出血が見られ注意が必要です。75歳以上も避けられており「全員に」というわけにはなかなかいきません