PD-L1高発現の脳転移に対するペムブロリズマブの効果

Efficacy of pembrolizumab in patients with brain metastasis caused by previously untreated non-small cell lung cancer with high tumor PD-L1 expression.

Wakuda K et al.
Lung Cancer. 2021 Jan;151:60-68
PMID:33246646.

Abs of abs.
TPS≧1%の未治療の非小細胞肺癌に対し、ペムブロリズマブの投与が推奨されている。KEYNOTE-024試験では、PD-L1=50%以上の未治療非小細胞肺癌におけるペムブロリズマブの有効性が報告された。しかし、未治療の脳転移(BM)を有する患者の多くは臨床試験から除外されている。そこで、PD-L1高発現、非小細胞肺癌のBMに対するペムブロリズマブの有効性を評価した。2017年3月から2019年9月までに、PD-L1≧50%の非小細胞肺癌に対する初回治療としてペムブロリズマブを投与された患者を後ろ向きに検討した。治療効果はBMあり(BM群)とBMなし(非BM群)の患者間で比較した。BM群についてはペムブロリズマブ投与前にBMの治療を受けた患者(BM-T群)とBMの治療歴がない患者(BM-not T群)に分け、比較した。
評価対象は87例(BM群23例、非BM群64例)であった。BM群と非BM群では患者背景に有意差は認められなかったが,診断時にIV期の患者の割合はBM群の方が有意に高かった。BM群と非BM群で無増悪生存期間中央値(6.5ヵ月 vs. 7.0ヵ月)、全生存期間中央値(21.6ヵ月 vs. 24.6ヵ月)に有意差はなかった。BM群の奏効率は70%であった。BM群をBM-T群13例、BM-not T群10例にさらに分割し検討した。患者背景は両群間で有意差は認められなかったが、BMの最大径と有症状割合はBM-T群の方が有意に高かった。PFSとOSは両群間で有意差はなかった。PFS中央値はBM-T群で13.6ヶ月、BM-not T群で18.6ヶ月であった。結論として、ペムブロリズマブはPD-L1高発現の未治療NSCLCにおけるBMに有効である可能性がある。

感想
ペムブロリズマブなどを含めたICIを始めるときに、無症候性脳転移を処置しておくかはなお議論されています。今回は初回のペムブロリズマブ単剤での効果が高いPD-L1>=50% についての実地報告です。一番関心のあるのは脳転移に対する効果です(Table4)。これを見ると未処置の脳転移に対する奏効率は60%、PDは10%でした(ただしNEも30%あることに注意)。処置後でも奏効率77%、PDは0%でした(NEは30%)。背景が違い過ぎるので単純比較はできませんが、処置後の方がPDが少ないことから時間的余裕を考慮し、できるものはした方が良いのかもしれません。はっきり確認できなかったのですが、今回はペムブロリズマブ単剤のデータと思われ、KN189レジメンではさらに上乗せが期待できるでしょう。ドライバー変異のみならず、頭部への放射線治療は遅らせていく方向性であり、頭部の至適フォローアップタイミングや脳転移だけ悪化した場合免疫療法との間隔の開け方など、実地で解明すべき課題が山積しています。