PS不良例に対するICIのメタアナリシス

Effectiveness and safety of immunotherapy in NSCLC patients with ECOG PS score ≥2 – Systematic review and meta-analysis.

Tomasik B et al.
Lung Cancer. 2021 Aug;158:97-106.
PMID:34144405.

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免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、進行性非小細胞肺癌における標準治療であるが、PS不良の患者における状況はよくわかっていない。今回はPS2以上のNSCLC患者におけるICIの有効性と安全性を評価することを目的とした。方法としてPS1以下とPS2以上のNSCLC患者におけるICIの有効性と安全に関する研究と観察研究を集めレビューとメタアナリシスを行った。有効性の評価は、奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)でおこなった。安全性は、グレード3以上の有害事象(AE)とした。メタアナリシスにはランダム効果モデルを適用し、異質性はI2で評価した。67件の研究(n=26,442人)が対象となり。PS2以上の患者とPS1以下の患者で比較した。奏効のオッズ比は、0.46[0.39-0.54], I2:0 %)、0.39[0.33-0.48], I2:50 %)、AEが1.12[0.84-1.48], I2:39 %)であった。PFSハザード比は2.17[1.96-2.39]、I2:65%)、OSハザード比は2.76[2.43-3.14]、I2:76%)であった。安全性については、PSに関わらず同等の結果が得られた。
PS不良は、代表的なPS1以下の集団と比較して、ICIを投与された場合に奏効率が平均で2倍低くなる。ICIを投与された肺癌患者において、PS不良は予後だけでなく奏功の予測にもなり、一方で安全性には影響しない。PS不良例がICIから恩恵を受けるかどうかを判断するには、前向きランダム化試験が不可欠である。

感想
あくまでもこれまでの報告からPS2以上を取り出してまとめた結果です。奏効率としては15%程度、無増悪生存期間と全生存期間は半減以上といった結果になりました。惜しいのはPD-L1発現別では検討されていない点です。PS不良例への前向き試験としてはPePS2試験[Middleton G Lancet Respir Med2020 PMID:32199466]があり、毒性も増加せずある程度の臨床的利益も期待できるとする結果でした。この試験ではPD-L1発現が高い方が利益を得られる傾向にありました。後ろ向きデータは時代の変化もあり、原因と結果が逆になることも多く解釈が難しいです。それでもPS不良例に対するICIは効果も少ないが、有害事象もそれほどでないという現象が確認できたのは意義深いと思います。本論文でも述べられているように臨床的利益を受けられる基準の確立が必要で、未だにPD-L1発現の状態によってどうするか個別に考えるべき状態にあると思います。