Entrectinib in ROS1 fusion-positive non-small-cell lung cancer: integrated analysis of three phase 1-2 trials.
Drilon A et al.
Lancet Oncol. 2019 Dec 11. [Epub ahead of print]
PMID:31838015
Abs of abs.
ROS1のような融合遺伝子は、非小細胞肺癌を含む種々の癌の発癌ドライバーである。ROS1融合変異陽性非小細胞肺癌患者の最大36%に、診断時の脳転移が見られる。エヌトレクチニブは中枢神経系に浸透効果が高く設計されたROS1阻害剤である。今回は局所進行/転移性ROS1融合変異陽性非小細胞肺癌患者におけるエヌトレクチニブの使用について検討した。3つの継続中の第Ⅰ相または第Ⅱ相試験のエヌトレクチニブ(ALKA-372-001、STARTRK-1、STARTRK-2)の統合解析を行った。有効性が評価可能な集団として、18歳以上で局所進行/転移性ROS1融合変異陽性非小細胞肺癌の患者で、1日1回少なくとも600mgの用量でエヌトレクチニブを投与され、少なくとも12ヶ月間追跡されたものが対象となった。PS0-2であり、前治療(ROS1阻害剤以外)が許容されている。プライマリーエンドポイントは、奏効率および効果持続時間であり、盲検化された独立中央委員会で評価された。少なくとも1回のエヌトレクチニブの投与を受けた患者(投与量または追跡期間に関係なく)はすべて安全性評価に含まれた。患者は2012年10月から2018年3月までALKA-372-001に、2014年8月から2018年5月までSTARTRK-1に、2015年11月からSTARTRK-2に登録されている。カットオフ日は2018年5月31日である。有効性評価が可能な53人のうち41人、77%[64-88]に反応が見られた。追跡期間中央値は15.5カ月で、奏効期間中央値は24.6か月[11.4-34.8]であった。安全性評価が可能であった134人のうち79人(59%)にグレード1または2の治療関連有害事象が見られ、46人(34%)にグレード3または4の治療関連有害事象が見られた。多かったのは体重増加(10人 [8%])および好中球減少症(5人 [4%])であった。15人(11%)の患者は重篤で、内訳は神経障害(4人 [3%])および心臓障害(3人 [2%])であった。治療関連死はなかった。本研究においてエヌトレクチニブは、ROS1融合変異陽性非小細胞肺癌患者において長期の病勢コントロールに有効であり、許容内の安全性を示し、長期投与に適すると考えられた。これらのデータから治療選択肢を広げるために、ROS1融合をルーチンで検査する必要性が強調される。
感想
エヌトレクチニブは動物実験において、血液脳比が0.4-1.9と非常に高い中枢神経系移行性を持っています。従って脳転移への効果が非常に期待されます。本試験では、脳転移20例中11例がレスポンスし55%の奏効率となっています。測定可能であったものについてはfig1Cにwaterfall plotがあり、ほとんどの症例で縮小が得られています。脳病変は放射線治療が先行していたり、あるいは薬剤への反応を見る前に放射線治療されたりと評価が難しいところがあります。脳転移を有する患者の全体としての奏効率は74%、無増悪生存期間は13.6ヶ月でした。脳転移のない症例では奏効率80%、無増悪生存期間が26.3ヶ月と非常に良好でした。全体的なwater fall plotを見るとほとんどが縮小しており、実地でした場合、ほぼ全例で長期の効果を実感できそうな結果と思われます。
さてROS1陽性肺癌の予後はどれくらいでしょうか。最近クリゾチニブを使用したPROFILE1001のupdateが報告され、生存期間中央値は51.4ヶ月、3年生存率が53%でした[Shaw AT AnnOncol2019 PMID:30980071]。おそらくALK陽性肺癌と同じか、それ以上は期待できそうです。となれば希少とは言えROS1肺癌を見逃してはならないわけで、遺伝子パネル検査の重要性は高まるばかりです。保険の問題、エキスパートパネルの問題などややこしい問題が山積していますが、一般病院でももう少し使いやすい方向に変わるよう願っています。