Impact of TP53 mutation status on systemic treatment outcome in ALK-rearranged non-small-cell lung cancer.
Kron A et al
Ann Oncol. 2018 Oct 1;29(10):2068-2075.
PMID: 30165392
Abs of abs.
今回はALK融合遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌において、共存する遺伝子変異が予後に影響を与えるかどうかを検討した。ALK陽性のⅢB/Ⅳ期の非小細胞肺癌患者を、次世代シークエンスおよびFISHで解析した。総コホートおよび治療関連サブコホートにおいて、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を決定し交絡因子を排除するためにCox回帰分析を行った。ALK陽性肺癌216人の中で、TP53変異の頻度は23.8%であったが、他の遺伝子変異の共存は稀であった。ALK/TP53共存変異患者ではPFSおよびOSの中央値は、TP53野生型患者と比較して有意に短かった(PFS 3.9ヵ月[2.4-5.6]対10.3ヵ月[8.6-12.0]、P<0.001、OS 15.0ヶ月[5.0-24.9]対50.0ヶ月[22.9-77.1]、P=0.002)。この差はすべての治療において確認され、抗がん剤のみの群(初回治療のPFS 2.6ヶ月[1.3-4.1]対6.2ヶ月[1.8-10.5]、P=0.021、OS 2ヶ月[0.0-4.6]対9.0ヶ月[6.1-11.9]、P=0.035、クリゾチニブ+化学療法(クリゾチニブのPFS 5.0ヶ月[2.9-7.2]対14.0カ月[8.0-20.1]、P<0.001; P=0.049]、OS 17.0ヵ月[6.7-27.3]対未到達、P=0.049)。次世代ALK阻害薬(次世代阻害薬でのPFS 5.4ヶ月[0.1-10.7]対9.9ヵ月[6.4-13.5]、P=0.039; OS 7.0ヶ月対50.0ヶ月、P=0.001)の結果であった。ALK陽性肺癌でのTP53の共存変異があると治療における予後不良が予測される。今回の結果により、根底にある分子メカニズムの理解が進み、ALK/TP53共存変異のサブグループの結果を改善することが期待される。
感想
これまでTP53変異と予後との関連が様々に解析されてきました。EGFR遺伝子変異陽性のなかでもTP53変異が共存するものは予後不良との報告があり、旧ブログでも取り上げました(http://blog.livedoor.jp/j82s6tbttvb/archives/51077032.html)。今回はALK陽性肺癌に限定した解析が報告されています。まず併存しているものとしてTP53変異が23.8%あり、BRAF0.6%、KRAS0.6%、MET増幅3.6%となっていました。Fig3に8つの生存曲線が示されています。全体、抗がん剤、クリゾチニブ、次世代ALK-TKIのPFSにおいて明らかにTP53変異と共存しているものは予後不良です。また全生存期間においてもクリゾチニブ+抗がん剤両者を行った群も含めすべてTP53変異陽性群が予後不良となっていました。またPD-L1染色の検討もなされており、細かく5段階評価されています。ダコ社でない22-8抗体を使い22C3の解釈と若干問題が残りますが、スコア0(<1%)、スコア1(>=1%)からスコア5(>=50%)と判定し比較しています[Scheel AH ModPathol2016 PMID:27389313]。それによるとスコア1以上が野生型対変異型で41%対90%と、陽性例はTP53変異例に有意に多いものの、強陽性例(>=50%)は、23%対30%とわずかに多そうといった結果でした。引用文献からはTP53変異が遺伝子の不安定性の高さと関連[Alidousty C J Pathol2018 PMID:29885057]しているとの報告もあり、TP53変異例への免疫療法の効果も気になるところです。TP53変異と免疫療法との関連は、肺癌での報告はまだないようです。悪性黒色腫におけるCTLA-4阻害薬の検討では、TP53変異陽性はPFS、OSに対してネガティブな因子となるようです[Xiao W EBioMedicine2018 PMID:29793878]。
次世代シークエンサーの進歩とともに主要なドライバー変異以外に併存している変異についての解析も進みつつあります。初期あるいは獲得耐性の解明も徐々にそのような脇役と見られるものへの話題が増えています。しかもスピードが加速しています。最終的には質とともに変異量などもすべて含めた分子情報に基づいて治療方針が決定される時代が来るでしょう。そしてその決定は日々更新されるデータを考慮したAIで自動的になされるようになるでしょう。多少SF的ですが、治療カンファレンスの出席者にAIの名前が記録される時代が近いかもしれません。