TP53変異部位と予後との相関

Clinical impact of TP53 classifications in previously treated advanced driver-negative non-small cell lung cancer: A biomarker analysis of the OAK and POPLAR randomized clinical trials.

Zhou DD et al.
Lung Cancer. 2026 Feb;212:
PMID: 41500083.

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非小細胞肺癌において、TP53変異は不均一であり、タンパク質合成、機能、臨床転帰に様々な影響を及ぼす。今回はありなしの二分法よりもさらに細かいTP53変異分類が予後予測を改善し得ると仮定した。また特定の変異は化学療法と比較した免疫チェックポイント阻害剤の増強効果と関連し得ると考えた。これを検証するため、既治療進行非小細胞肺癌患者におけるアテゾリズマブと化学療法を比較した無作為化試験(OAKおよびPOPLAR)のデータを解析した。患者をベースライン血漿検査、変異コード、Olivier分類およびPoeta分類に基づき、TP53変異型/野生型に分類した。TP53変異の予後的意義を評価するため多変量Cox回帰分析を実施し、その予測的価値を評価するため交互作用検定を行った。762人中、49%がTP53変異を有していた。二分法に基づくTP53変異は、野生型と比較して全生存期間の悪化と関連したが、統計的有意ではなかった(ハザード比1.15[ 0.96-1.38];P =0.12)。しかし、コーディング変異による分類ではナンセンス変異(ハザード比1.71[1.22-2.39];P=0.002)、Olivier分類でのノンミスセンス変異(ハザード比1.33[1.03-1.74];P=0.03)、およびPoeta分類による破壊的変異(ハザード比1.33[1.37-1.77];P=0.03)は、統計学的に有意なOSの悪化と関連していた。TP53の状態は、ICIと化学療法をどちらからうけられるかを予測しなかった(相互作用P=0.45)。初回化学療法進行後のドライバー陰性進行非小細胞肺癌において、TP53のナンセンス変異、非ミスセンス変異、破壊的変異は、いずれも全生存期間の著明な短縮と強く関連していた。これらのデータは、今後の臨床試験における層別化因子としてのTP53変異の細かい分類の有用性を支持し、予後推定の補助としての使用も支持するものである。

感想
Olivier分類[Olivier M ClinCanRes2006 PMID:16489069]とは、TP53の極めて重要な部分(DBM:DNA-binding motifs)とその関連部分のミスセンス変異と、それ以外のミスセンス変異、その他の変異に分ける方法です。乳がんで最初に検討され、DBM内ミスセンス変異を持つ集団の予後が悪いとされています。Poeta分類[Poeta ML NEJM2007 PMID:18094376]は、TP53の立体構造が致命的に破壊されるかどうかで破壊的変異、非破壊的変異に分類します。頭頚部癌で検討され破壊的変異が予後不良とされています。しかしこれらの報告は一概に他の癌で当てはめられず統一見解に至っていません。今回は臨床試験データでやってみたとのことで、背景の一致や治療の質が担保されている点があり信頼できるデータとなります。結果としては全体的にTP53変異例が予後不良で、細かく見た場合Olivier分類では非ミスセンス変異(Fig3B)、Poeta分類による破壊的変異(Fig3C)が有意に予後不良となりました。ものすごく大きな差とは言えませんが、まずはこういうものとしてとらえておくしかありません。ただTP53変異有無だけをみると、単変量では差がありますが、生存期間に関して性別、年齢、喫煙などを加えた多変量解析をするとハザード比は1.15[0.96-1.38]となりあまり差が見られなくなります。細かく変異部位別に検討を行っていくと多少の差異があります。詳しくは要約にあるとおりですが、本文と数字が微妙に違い気持ち悪いですがTableを頼りに見ていきます(蛇足ですがTable3は紙面では改行が見にくく、WEB版のの方が見やすいです)。結局変異部位別に予後が異なりますが、一様に悪化の方向であり良くなることはありません。そしてこれらは特に免疫療法の恩恵を受けるわけでもなく、治療選択の足がかりにはなりませんでした。