Clinical Outcomes of Combined Chemoimmunotherapy in Patients With Advanced Lung Adenocarcinoma: A Prospective Observational Study.
Katayama Y et al.
JTO Clin Res Rep. 2023 Mar7;4(4):100494.
PMID:37020925
Abs of abs.
TTF-1陰性の肺腺癌は、一部の治療に対する予後不良因子であると信じられている。しかしTTF-1発現と免疫複合療法おける影響はよく分かっていない。今回は進行肺腺癌患者において、TTF-1発現と免疫複合療法での有効性を検討した。今回の多施設共同前向き観察研究は、10施設で行った免疫複合療法の患者58名を対象とした。治療前のTTF-1発現は免疫染色で決定した。奏効率はTTF-1陽性群で有意に高く(76.3% 対45.0% p=0.02)、PFSも有意に良好であった(10.9ヶ月 対 5.0ヶ月、p=0.01)。多変量解析ではTTF-1発現はPFSの独立した予後良好因子であった。PD-L1=50%以上かつTTF-1陽性では、他の群に比べPFSが有意に長かった(p=0.02)。今回の研究により、TTF-1陽性は免疫複合療法において予後良好と関係することが知られた。
感想
TTF-1陰性のKeynote-189レジメンはどうなのか?と以前書いたことがあります。その中でTTF-1陰性ではペメトレキセドの効果が落ちるので、KN189レジメンでの生存曲線がTTF-1陰性で落ちているのではないかと予想しました。このことについて最近報告がありました[Ibusuki R Transl Lung Cancer Res2022 PMID:36519019]。それによるとPFSハザード比0.63で予想通り開いていました。しかしいくらペメトレキセドの効果が落ちても、ペムブロリズマブで救われている人も多いはずです。そこでTTF-1陰性だけでKN189レジメンと、ペメトレキセドをnabパクリタキセルに変更したレジメンの比較試験ができれば良いですが、保険診療の関係上難しいと思います。最終的なTailがどうなるかも気になるところです。
今回の試験は免疫複合療法全体で見て、TTF-1別ではどうなっているのかという研究です。まずTTF-1陽性とPD-L1=50%以上との関連ですが、今回は関連ありと肯定的な結論となっていますが、大規模な報告はまだないので続報を待ちたいと思います。TTF-1自体はどちらかというと予後良好因子なので、免疫複合療法でのPFSが良好でも、どんな薬剤でもそうであった可能性を否定できません。奏効率も同様です。くどいようですが、これだけでは薬剤効果で予後が改善したと言えないということです。
さて私が一番知りたかったの事は補遺Fig1にあります。それはTTF-1別に見たとき、PTX/PEMを含む免疫複合療法でのPFSはどうなっているか?です。これは2つのグラフに分かれていますが、TTF-1陰性のペメトレキセドレジメンでのPFS4.2ヶ月、(nab)パクリタキセルで5.5ヶ月でした。TTF-1陽性例ではPEM/PTXがそれぞれ11.1ヶ月、9.4ヶ月でした。中央値だけの比較にはなりますが、その昔POINTBREAK試験でのOS:TTF-1別で見られた事が再現され(このTTF-1別データは論文化されていません)、今回のPFS:全体ではTTF-1陽性>陰性、さらに内訳ではTTF-1陽性PEM>TTF-1陽性PTX>TTF-1陰性PTX>TTF-1陰性PEMときれいに並んでいます。これらのデータを見ますとTTF-1陰性例にペメトレキセドを含むレジメンはどう考えても分が悪いように思います。私も自験例を解析してみましたが、同じ傾向でした。一方エビデンスベースではTTF-1は考えずにnon-SqとしてKN189レジメンを使った臨床試験のデータで治療説明をするわけです。複数の報告で全体的にTTF-1陰性は、陽性例より悪く、中でもPEMがより悪く、PTXが悪いながらもましであることが分かってきました。エビデンスの奴隷である私たちはどう振る舞うべきしょうか、実は結構悩んでいます。