Ⅲ期抗がん剤+放射線同時併用の長期データ

Effect of Second-generation vs Third-generation Chemotherapy Regimens With Thoracic Radiotherapy on Unresectable Stage III Non-Small-Cell Lung Cancer: 10-Year Follow-up of a WJTOG0105 Phase 3 Randomized Clinical Trial.

Zenke Y et al.
JAMA Oncol. 2021 Jun1;7(6):904-909.
PMID:33734289

Abs of abs.
根治的抗がん剤+放射線療法(CRT)を受けた患者の10年生存率と晩期毒性を評価することを目的とした。この多施設共同第3相ランダム化試験(WJTOG 0105)は、2001年9月から2005年9月にかけて行われた。切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌患者が適格とされている。2018年1月から2019年12月までの追加データを元に解析した。計440人が以下の3群に割り付けられた。A群(対照)はマイトマイシン/ビンデシン/シスプラチンを4サイクル+60Gyの胸部放射線治療(TRT)、B群は週1回のイリノテカン/カルボプラチンを6週間+60GyのTRTを行い、その後イリノテカン/カルボプラチンの地固めを2コース行う、C群は週1回のパクリタキセル/カルボプラチンを6週間+60GyのTRTを行い、その後パクリタキセル/カルボプラチンの地固めを2コース行う。主要評価項目は CRT後の 10年生存率。副次評価項目はCRT開始後90日以上経過してから発生した晩期毒性とした。2001年9月から2005年9月までに440人の患者(A群、n=146[33.2%、女性18人(12.3%)]、B群、n=147[33.4%、女性22人(15.0%)]、C群、n=147[33.4%、、女性19人(12.9%)])が登録された。追跡期間中央値(範囲)は11.9(7.6-13.3)年であった。A群、B群、C群での全生存期間中央値はそれぞれ20.5(17.5-26.0)、19.8(16.7-23.5)、22.0(18.7-26.2)カ月で、10年生存率はそれぞれ13.6%、7.5%、15.2%であった。全生存期間についての有意差はなかった。10年無増悪生存率は、A群、B群、C群でそれぞれ8.5%、6.5%、11.1%であった。グレード3または4の遅発性毒性発現率は、A群で3.4%(心臓0.7%、肺2.7%)、肺のみに発現したものは、B群およびC群でそれぞれ3.4%および4.1%であった。なお,最初の報告以降,遅発性毒性(グレード3/4)が認められた症例はなかった。本検討により、C群は治療開始から10年後にA群と同様の有効性と有害事象であった。この結果は、今後のCRTの臨床試験の結果の長期比較対照を示したことになる。

感想
この時代と大きく違うのは放射線治療技術の進歩とPETの臨床導入です。今ではプレミア物?となっているWJTOG0105のプロトコールを持っていますが、それによると当時はXPシュミレーターによる位置決めも許容されています。またPETについては全く記載がありません。
さて根治的治療であるからには根治率も知りたいところです。どう定義するかによりますが、5年PFS率はそれぞれ10.2%、10.8%、および12.3%であり、10年PFS率は、それぞれ8.5%、5.9%、11.1%でした。おそらく従来の方法であれば10%前後は治癒できるとのことであり、確かに大きく参考となるCRTのヒストリカルデータを提供しています。先ごろ発表されたASCO2021ではPACIFIC試験における5年PFS率が、デュルバルマブ33.1%、プラセボ19.0%と報告されています。単純比較はもちろんできませんが、完治に準じるところまで到達できる人がこの15年で3倍に増えていることは喜ばしいことです。