免疫チェックポイント阻害薬の後、すぐにオシメルチニブは危険

Severe immune-related adverse events are common with sequential PD-(L)1 blockade and osimertinib.

Schoenfeld AJ et al.
Ann Oncol. 2019 May 1;30(5):839-844.
PMID:30847464

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌(NSCLC)に対して、PD-(L)1阻害薬とオシメルチニブを投与すると重篤な免疫関連有害事象(irAE)が起こることが知られている。今やPD-(L)1阻害薬が術後補助化学療法および初回治療として日常的に広く使用されている。特にPD-(L)1阻害薬→オシメルチニブの治療は今後使用頻度が増えるだろうと思われるが、予期できない重大な毒性の可能性がある。今回は、投与順序に関係なく、PD-(L)1 阻害薬およびEGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)で治療されたEGFR変異陽性NSCLC患者を対象とした(n=126)。さらに診療録レビューを行い、重度の毒性(NCI-CTCAE グレード3-4)を特定した。PD-(L)1阻害薬→オシメルチニブで治療された患者の15%(41人中6人)に重度のirAEが見られた。重度のirAEは、オシメルチニブ開始前3ヶ月以内にPD-(L)1阻害薬を受けたものでより顕著に見られていた。その割合は3ヶ月以内24%[10-45]で、3-12ヶ月では13%[0-50]、12ヶ月以上開いていた場合は0%[0-28]であった。対照的に、オシメルチニブ→PD-(L)1阻害薬では0%[0-14]、またPD-(L)1阻害薬→他のEGFR-TKI(アファチニブ、エルロチニブ)でも0%[0-15]であった。重度のirAEは、オシメルチニブ開始から中央値で20日後に発症していた。全員にステロイドが必要となり、入院を要した。今回の検討では、PD-(L)1 阻害薬→オシメルチニブが重度のirAEと関連しており、PD-(L)1 阻害薬を受けた時期が近い場合にその頻度が高かった。オシメルチニブ→PD-(L)1 阻害薬の場合や、PD-(L)1阻害薬→他のEGFR−TKIの場合は、irAEが見られなかった。この関係性は、他のEGFR-TKIと違ってオシメルチニブに特異的であるように思われる。

感想
PD-(L)1阻害薬とTKIの併用が問題となったのは、TATTON試験(NCT 02143466)からであったと思います。この試験はオシメルチニブと様々な薬剤との組み合わせを探索するphaseⅠb試験で、デュルバルマブとの同時併用において、38%に間質性肺炎が起こり、そのうち15%はグレード3,4と重篤であったもので、この部分は中止されています。それ以来、特にオシメルチニブとPD-1阻害薬との逐次併用でも毒性が強まるとの報告が続いています。今回のPD-(L)1 阻害薬→オシメルチニブで起こった重篤なirAEが6例/41例(15%)で見られ、4例がG3肺臓炎、1例がG3腸炎、1例がG4肝炎でした。ICIとオシメルチニブの期間は、少ない順に22,23,28,29,39,314日で殆どが1か月程度と考えて良さそうです。肺臓炎の4例は高用量のステロイドに反応し1ヶ月以内に改善、しかし腸炎は重篤で、長期のステロイド+2度のインフリキシマブを要したとのことです(その間もオシメルチニブは継続されていた)。肝炎の症例は高用量ステロイドにセルセプトを加えて収まったようです。この症例では肝炎が収まった18日後にオシメルチニブが再開されましたが、G3の肝炎が再燃したようです。他に2名、有害事象が収まって70日後と79日後にオシメルチニブを再開した症例があり、これらはirAEの再燃を見なかったとのことです。またオシメルチニブではなく他のTKI(エルロチニブとアファチニブ)を受けた患者もirAEの再燃は見られなかったとのことでした。なお使用された免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ(+カルボプラチン+ペメトレキセド)、イピリムマブ+ニボルマブでした。今回は非常に臨床に即した報告ですが、類似の報告が肺臓炎に関して日本からも出されています[Uchida T ThoracCancer2019 PMID:30864291]。今回の論文と同じように、ICIから1ヶ月以内にオシメルチニブを投与すると肺臓炎のリスクが高いことが見て取れます。この中に逆のアファチニブ→ニボルマブで肺臓炎を起こした症例が入っていますが、投与間隔はわずかに2日で、薬剤のwashoutが差が関与していることを想像させます。しかしこれには反論もあります。なぜならエルロチニブ+ニボルマブのphaseⅠ試験[Gettinger JTO2018 PMID:29802888]で肺臓炎が見られていない事実があるからです。ただしG3の肝機能障害は出ています。前述のTATTON試験では肺臓炎は日本人に多く、人種差が疑われていましたが、今回の結果によりやはり全体的に危ないことが知れました。私達は通常日本人を対象に診療していますので、これだけで十分に日常臨床に寄与する情報です。結論としては、ICIの後にオシメルチニブを使う必要性があるときは、少なくとも3ヶ月、できれば1年くらい期間をおいてからということになります。