初回治療としてのアテゾリズマブ単剤

Atezolizumab for First-Line Treatment of PD-L1-Selected Patients with NSCLC.

Herbst RS et al.
N Engl J Med. 2020 Oct 1;383(14):1328-1339.
PMID:32997907

Abs of abs.
PD-L1発現陽性の未治療非小細胞肺癌に対して、PD-L1抗体であるアテゾリズマブ投与した場合の効果と安全性については未知である。対象は未治療の進行非扁平上皮または扁平上皮癌で、SP142染色で評価した腫瘍細胞の1%以上または腫瘍に浸潤している免疫細胞の1%以上にPD-L1が発現している患者を対象としランダム化第Ⅲ相試験を行った。患者は、アテゾリズマブか化学療法に1:1で割り付けられた。プライマリーエンドポイントは全生存期間で、EGFR変異とALK融合のない野生型の患者を対象にし、PD-L1発現によって段階的に検討した。さらに全生存期間および無増悪生存期間について、2つのPD-L1染色の所見および血液で測定したmutation burdenにより前向きに評価した。全体で572人の患者が登録された。PD-L1高発現のサブグループ(205人)における生存期間中央値は化学療法群よりアテゾリズマブ群の方が7.1ヵ月長かった(20.2ヵ月 vs 13.1ヵ月;ハザード比0.59;P=0.01)。安全性を評価できた患者のうち、有害事象はアテゾリズマブ群で90.2%、化学療法群で94.7%で見られ、グレード3、4の有害事象は30.1%、52.5%であった。TMBが高い集団では全生存期間と無増悪生存期間についてアテゾリズマブが良い傾向にあった。今回の結果から初回のアテゾリズマブ治療によって、組織型にかかわらず、PD-L1発現が高い非小細胞肺癌において、プラチナ製剤を用いた化学療法と比べて全生存期間を有意に延長した。

感想
KEYNOTE-024試験[Reck M NEJM2016 PMID:27718847]とKEYNOTE-042[Mok TSK Lancet2019 PMID:30955977]試験のアテゾリズマブ版といったところの試験です。染色に使ったのはSP142でアテゾリズマブにおなじみのものです。強陽性の定義は腫瘍細胞>=50%(TC3)または腫瘍浸潤免疫細胞>=10%(IC3)、中陽性は腫瘍細胞>=5%(TC2)または腫瘍浸潤免疫細胞>=5%(IC2)、なんらかの陽性とは両者のどちらかが1%以上(TC1/IC1)あることと定義されます。既報と今回の結果からおそらくTC3/IC3は22C3染色でいうところのPD-L1>=50%と読み替えてよさそうです(Fig2とFigS6)。
統計設定はまずTC3/IC3のサブセット(≒KEYNOTE-024)で全生存期間、それが有意ならTC2-3/IC2-3で全生存期間、さらにTC1-3/IC1-3(KEYNOTE-042)の順で全生存期間を検定して行き、累積のP値が0.05を超えたら終了という流れになっています。結果はTC3/IC3でP=0.01、TC2-3/IC2-3でP=0.04であり、ここで0.05を超えてしまったので終了、結局PD-L1強陽性(TC3/IC3)しか有意でなかったという結論になります。高中等度陽性は、18.2ヶ月 vs. 14.9ヶ月:ハザード比0.72、すべての陽性集団では生存期間中央値17.5ヶ月 vs.14.1ヶ月:ハザード比0.83[0.65-1.07]で3ヶ月の延長となりました。KEYNOTE-042試験のTPS>=1%では16.7ヶ月 vs. 12.1ヶ月:ハザード比0.81と最初の方が交差する点を含め非常によく似ています。
後治療について、TC3/IC3で化学療法群の免疫療法は29.6%にされていますが、KEYNOTE-024試験でも検討されたように、集団として後からでは追い付けないことが再確認されたと言えます。月並みではありますが、治療戦略として治療開始前にドライバー変異が陰性で免疫療法を使うかどうかを考え、使うのであれば低発現であってもできるだけ早く使うというのが基本になると言えます。免疫療法を単剤で使うかどうかの議論はあるものの有効性が期待されるものから先に使うことになります。