Validation of the Lung Immune Prognostic Index in patients with untreated advanced non-small cell lung cancer: Post hoc analysis of the IMpower 130, 131 and 150 trials.
Auclin E et al.
LungCancer. 2024 Nov 25. Epub ahead of print.
PMID:39612560.
Abs of abs.
LIPIは進行非小細胞肺癌における免疫療法(IT)と強い相関がある。 現在化学療法(CT)と免疫療法(IT)の併用療法に関するLIPIのデータは限られている。今回はCT +/-IT, +/-抗血管新生阻害薬(AA)の1次治療におけるLIPIの予後因子としての価値を検討した。国際第3相多施設共同試験IMpower150、IMpower131、IMpower130に含まれる野生型EGFR/ALKでCT +/-アテゾリズマブ、ベバシズマブによる1次治療を受けた患者データを後ろ向きに解析した。LIPIは好中球/(白血球数-好中球数)(dNLR)比と血清LDHに基づいて算出された:良好(dNLR<3かつLDH<正常上限)、中間(dNLR≧3またはLDH≧正常上限)、不良(dNLR≧3かつLDH≧正常上限)と定義した。2540例中、48.6%がLIPI良好、40.8%が中間、10.6%が不良であった。 LIPIは、全コホートのOS、PFS(p<0.001)および各治療コホート(すべてp<0.001)において、アウトカムと有意に関連していた。 年齢、喫煙の有無、転移部位の数、脳または肝への転移、PSで調整した後も、LIPIはPFSとOSの独立した予後因子であった。 LIPI良好群(n=1235)では、CT+IT+AA療法を受けた患者でPFSの延長が観察され(PFS中央値11.3カ月 vs. 他レジメン7.6カ月未満、p<0.001)、OSにもその傾向がみられた(OS中央値26.1カ月 vs. 20.7カ月、p=0.08)。 LIPI不良群では化学療法と比較して有意なPFS改善効果を示したレジメンはなかった。 LIPI良好+PD-L1≧50%(n=105)は長い奏効を示していた(PFS中央値11.1カ月、OS未到達)。今回の検討から、LIPIは治療レジメンに関係なく、PFSとOSの予後因子であった。 LIPI不良例では併用療法によるベネフィットは得られなかった。 LIPIとPD-L1の組み合わせにより、初回治療選択が改善されるかも知れない。
感想
当該メーカーはほとんど宣伝していないようですが、どこでもできて追加コストがかからないLIPIの価値を確定させる重要な報告です。これまでNLRやLIPIは、後ろ向き研究の集積であり、第Ⅲ相試験のデータセットでは検討されていませんでした。しかし今回IMpowerシリーズで、合計2500例あまりの膨大な数で検討されたことは評価に値します。まとめはTable2になりますが、抗がん剤でも免疫療法を加えても、血管新生阻害薬を加えてもきれいに予後が層別化されることがわかりました。大雑把な結果としては、通常化学療法、化学療法+血管新生阻害薬、化学療法+免疫療法では、LIPIが悪くなっても同じようなハザード比です(良好を対照として中間1.3、不良1.8くらい)。しかし化学療法+血管新生阻害薬+免疫療法では、約1.5、約4と大きく差が開くのが特徴です。ただしLIPIの初出論文[Mezquita L JAMAoncol2018 PMID:29327044]では化学療法のみに対する予後との相関が認められていないことから、確実とは言えません。またPD-L1染色についての詳細が書かれておらず、元試験どおりであれば、SP142による染色であり、22C3に直接読み替えられるかどうか不安な部分もあります。それでも前向き試験であり登録基準も揃っている症例で、これだけ大規模に行って出た結果は、研究範囲外の解析と言えどもかなりの信頼性を持ちます。Figure2も興味深く、化学療法を対照群とした、LIPI3分類でのフォレストプロットが示されています。LIPI不良群では、抗がん剤に血管新生阻害薬を足そうが、免疫療法もしくは両者を足してもPFSもOSも改善しないことが見て取れます。また、figure3には免疫療法を行った症例で、PD-L1別に見た場合、PD-L1=50%以上で多少乱れるものの、全体としてはLIPIできれいに層別化されることが示されます。それぞれ見事な結果としか言いようがないです。しかも対象は臨床試験に入ったグループであり、総合するとPS良好、臓器機能が保たれている症例でも、LIPIが悪い場合には免疫療法には相当慎重になるべきでことを示唆すると考えます。