術後補助化学療法としてのTKIの適否:GGOとEGFR遺伝子変異の存在をどうとらえるか

Prognostic influence of epidermal growth factor receptor mutation and radiological ground glass appearance in patients with early-stage lung adenocarcinoma.

Aokage K et al.
Lung Cancer. 2021 Aug 3;160:8-16.
PMID:34365179.

Abs of abs.
ADAURA試験では、EGFR遺伝子変異陽性のIB-ⅢA期の術後腺癌患者において、オシメルチニブの補助化学療法としての有効性が示された。しかし、これらの患者はヘテロ集団であり、すべての患者に適用すべきかどうかは議論がある。本研究では、GGOおよびEGFR遺伝子変異が予後に及ぼす影響を検討し、周術期治療の進歩のための最適な集団を特定することを目的とした。2003年から2014年の間に完全切除、病理学的ステージIA3-ⅡAの腺癌患者連続505人についてEGFR遺伝子変異を調べた。予後は、EGFRとGGOの有無を含む背景因子間で分析した。489名の患者のうち、193名(39.5%)にEGFR遺伝子変異が認められた。EGFR遺伝子変異陽性の無再発生存期間(RFS)と全生存期間(OS)は、EGFR野生型よりもわずかに良好であった。GGOがある患者における、EGFR遺伝子変異ありと野生型の間でRFSとOSに差はなかったが、GGOがない患者においては、EGFR遺伝子変異ありの方がEGFR野生型よりもOSが良好であった。GGOの存在は、OSとRFSにおいて強い独立した予後予測因子であったが、EGFR遺伝子変異は予測因子とならなかった。GGOのない患者においては、EGFR遺伝子変異陽性はわずかに高い再発率を示し、特にステージIBにおいてハザード比は1.427であった。本研究からGGOを有する腺癌は予後が非常に良好であり、術後補助療法を必要としない可能性がある。予後の悪い患者に対しては、周術期の治療をさらに研究していく必要がある。

感想
1年ほど前に発表されたADAURA試験[Wu YL NEJM2020 PMID:32955177](記事)がおそらく保険適用になると目されています。オシメルチニブの継続管理もさることながら、そもそも全員に必要なのかが明らかではありません。このことは、仮に保険適用になったとしても継続討議されるべきでしょう。先行研究でも、GGOはEGFR遺伝子変異が多い傾向にあること、女性、非喫煙者に多いことはすでに報告されています。重複することもある因子ですが、今回はGGNとEGFR遺伝子変異有無の2点を中心に論じられています。当然のことながら、TKIが使えるかどうかでOSは大きく変わるので、RFSの方が議論しやすいように思います。Fig2Aに素でEGFR有無で比較したRFSが示されます。これを見るとmutantの方が若干良い傾向にあります。さらに細分化して、GGOあるなしを加えたRFS、OSの表がFig3となっています。特徴としてはGGOがない人で見た場合、EGFRの有無で分けてもRFSがほぼ重なり、GGOありの人の場合、全体としてかなりRFSが良好で、中でもEGFR遺伝子変異陽性が良好な点が目につきます。他の予後因子も加え多変量解析したところ、GGOはハザード比1.926[1.340-2.769]で非有意、EGFRはハザード比1.071[0.789-1.454]で有意、他に有意なのは年齢(75以上)1.552[1.133-2.127]、女性0.573[0.383-0.857]でした。これらのことから術後補助化学療法が必要になる候補として「GGOがないこと」を提案しています。GGOにもpure~part soildまでありもう少し細かい検討も必要となるでしょう。AIでの画像解析が一番取り組みやすい分野で、膨大な症例数を投入すれば方向性は出せるのではないでしょうか。またEGFR変異別にも検討が必要でしょう。いずれにせよ、不必要な人に投薬し肺臓炎で失うといった愚は極力避けねばなりません。個人的にはpureGGNや高齢者に、術後オシメルチニブは避けたいと思っています。